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2012年のワイン界の展望  2012年1月6日


世界のワインマーケットは、1年ごとではさほど変化していないようにも見えますが、3年前・5年前と少し期間をおいて見てみると、かなり変化しているのがわかります。今年2012年は、ワイン界はどう動くのでしょうか。


世界経済の動きとワイン市場

ここ何年か、世界経済はいろいろな不安定要素を抱えています。このことがワインマーケットに限らず、2012年のあらゆる面からの世界の関心事であるのは間違いないでしょう。特に、これまで先進国とされてきたヨーロッパ・アメリカ・日本の経済環境の変化は、通年の最も大きな関心事となるのではないでしょうか。

ワインは国際流通商品であります。ですからワインの流通は、世界経済の動向と直結します。従来のいわゆる先進諸国の停滞と、中国・インド・ロシア・ブラジルといった発展著しい諸国の動きは、ワインの生産・流通・消費にも大きく影響するようになるのではないでしょうか。

2012年のワイン界で予想される事柄をいくつか挙げてみます。

  • ヨーロッパの通貨不安、アメリカ・日本経済の不透明感など、先進諸国と言われてきた地域のワイン需給の行方(流通・消費)
  • 中国・インド・ロシア・ブラジルをはじめとする成長各国での需要増加の行方(消費)
  • 上記ワイン消費増加国のワイン生産の拡大と世界市場進出の萌芽(生産)
  • ワイン輸入国・輸出国双方の為替水準の問題(流通)

中国・香港は、引き続き最も注目がされることとなるのではないでしょうか。また、中国・インド・ロシア・ブラジルをはじめとするニュー・ニューワールドと呼ばれる国々のワイン生産の拡大と世界市場への進出の萌芽がそろそろ見られるかもしれません。


ワインのトレンドー高アルコール度からの回帰はあるか

21世紀最初の10年は、それ以前と比べてワインのスタイルがかなり変化した時期でありました。その顕著な例が、ワインの高アルコール度化です。以前は世界のワインの平均アルコール度数は、12度台でした。しかしこの10年ほどで、ワインの平均アルコール度数は1度程度上昇し、今では13度台の半ば程度です。

2000年代のワインの度数の上昇は、地球温暖化と関係があったかもしれませんが、どうも多くの部分は、ぶどうの栽培手法や収穫時期の延長、あるいは醸造上の手法などによって、恣意的にもたらされた側面が大きかったのではないでしょうか。それは、消費者がそうしたワインによく反応したためだともいえると思います。

さてしかし、この1〜2年ほどは少しその傾向が収まってきているのではないかという感じがしています。少し消費者もアルコール度の高いワインに疲れてきたのでしょうか。しばらく前は生産者の中でも、いかに高いアルコール度数を自分のワインは持っているかを自慢していた人たちが結構いましたが、最近ではあまり見かけなくなっているような気がします。

もしかすると今年あたりから、高アルコール度競争のようなものは、少し穏やかになってくるのかもしれません。様子を見ていきたいと思います。

そのほか、世界のワイン市場で気になる事柄として、

  • ワインに対する遺伝子操作の問題
  • 地球温暖化・気候変動とワイン産地の変化
  • 世界のワイン資本・酒類資本の動向

などを挙げておこうと思います。


日本国内のワイン市場

日本のワイン消費量は過去10数年、増加のトレンドは見られません。日本人一人あたりのワイン消費量は年間約2リットルで、世界では100番目ぐらいです。

日本では2005年に、酒類の小売市場が実質的に自由化されました。(といっても免許制度は維持されています。)それとともに酒類の流通チャネルが劇的に変化しました。それまでは、酒類小売免許は個人にのみ付与されていましたが、2005年以降はその規制が取り払われたため、スーパーマーケットやコンビニなど量販店・チェーン店など法人が一気に参入しました。

さてこれによって酒類小売マーケットでは、ワインだけが取り残された結果となりました。ワインは並べておけば自動的に売れるという商品では基本的にないため、スーパーマーケットでは扱いにくい商品です。現状は、個人酒販店の数は一気に減少し、おいしいワインが対面で買える売り場というのは、大都市圏であってもかなり少ないのが現状です。

こうした環境下で、ワインを買いたいという消費者は宙に浮いた状態です。非常に努力をして、良いワインショップ・販売店と巡り合った人は救われていますが、大多数はそうではありません。

世界でも国や地域によって、アルコール飲料の販売規制は様々です。量販店が販売できる地域もあれば、できない地域もあります。しかしスーパーマーケットが酒類を販売できる地域では、大方の消費者はスーパーマーケットでワインを買っています。それは海外では、スーパーマーケットで売られるワインでも、消費者は大きな不満は持たないワインの品揃えと売り方になっているからです。スーパーマーケットにとって、ワイン売り場の充実は、その店舗に顧客を引き付けるマグネットとなっています。

しかし日本では、そうしたスーパーマーケットは極めて少ないのが現状です。そうかといってワイン専門店に行き当たることも容易ではない。どうも八方ふさがりのようです。

ひとつ救いがあるのは、レストラン・バーの盛況です。昨今のレストラン・バーはワインについて良いセレクションを持つ店が増えています。しかしワインは小売金額というわけではないので、多くのワインファンにとって、頻繁にレストラン・バーでワインを飲むというわけにもいきません。

日本の消費者は非常に優れています。非常に良い味覚感覚を持ち合わせていますし、世界的に見てトップレベルの豊かな人たちです。このワイン消費者が、大きな潜在需要を含めて宙に浮いた状態にあるという認識は、ワイン業界で活躍される皆様(特に経営者・マネジメント層の皆様)は、是非お持ちになると良いと思います。

最近では、外国資本が日本のワイン小売市場参入を検討しているという話も聞くようになりました。消費者にとっては、その資本の出し手が誰であれ、良いワインを買える機会が増えればそれに越したことはないと思います。

日本の大きな潜在ワイン需要が発掘されていないことに対して、なぜそうなっているのか、その構造が理解されれば、手を打ってくるところはあると思います。今年はそんな兆しが見える年となるのかもしれません。期待したいと思います。

WORLD FINE WINESは、ワインビジネスの成功をサポートしてまいります。

(伊藤嘉浩)


2013年のワイン界の展望』はこちらからどうぞ。


【関連ページ】

2014年のワイン界の展望
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2011年のワイン界の展望
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ワインのアルコール度数をめぐる議論
ワインの高アルコール度化からの回帰はあるのか』

日本のワインマーケットは成熟しているのか
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レストラン・バーのワイン戦略
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ワイントレンドと日本市場
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地球温暖化がワインにどう影響を与えるのか
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