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 日本のワインマーケットは成熟しているのか


 近頃、『日本のような成熟したワインマーケットでは・・・』というフレーズが、活字や口頭で時々聞かれるようになりました。私はこのフレーズを聞くと、非常な違和感を覚えるひとりです。

 日本のワインマーケットが成熟している??と瞬間的に思ってしまうのです。今回は、日本のワインマーケットの現状について書いてみたいと思います。


なぜ『日本のワインマーケットは成熟している』ことになるのか

 『日本のワインマーケットは成熟している』という言葉を発しておられるのは、明らかにワイン業界におられて、しかもそれを活字や口頭で発表しておられる方々です。つまり、ワイン界のプロと自認しておられて、周りからもそう思われている方々であろうと思います。

 見ておりまして、このフレーズは何の前提の説明もなしに、唐突に使われていますから、読んだり聞いたりしている側は、それを断定的に肯定的にとらえます。そうなのか、と。そうなのかと思う方々も、ワイン業界におられるプロフェショナルの方々が中心でありましょう。

 私には、『日本のワインマーケットが成熟している』という根拠が、どこをどう見てもまったく見いだせないため、しかもそう言われる根拠がどこにも示されていませんから、なぜ『日本のワインマーケットは成熟している』ということになるのか、その理由を類推してみるしかありません。

 ここからは私の勝手な想像です。私なりに、彼らの主張の根拠を想像してみると、

  1. なんとなくそう思う
  2. 過去10数年にわたって、日本のワイン消費量はほとんど変化していない
  3. ワインを飲む層はこれ以上増えることはない
  4. 売れているワインの大半は1000円以下のワインで、その傾向に変化が見られない
  5. 日本には世界を代表するほとんどのワインがすでに導入されている


といったところなのではないかと勝手に推測しています。しかし、本当にその前提は正しいのでしょうか。本当に『日本のワインマーケットは成熟している』のでしょうか。


日本のワインマーケットは、極めて未成熟な状態にある

 実を申しますと、私は多くの日本のワイン関係者は、『日本のワインマーケットは、非常に未成熟な状態にある』という前提を共有していると思い込んでいました。ところが実際はそうでもないらしく、これは日本のワイン界の方々にはそう認識してもらいたいという、むしろ私の願望であっただけなのかもしれません。

 私はたった今、『日本のワインマーケットが成熟している』という説には、根拠がないと批判したばかりですから、今度は私の言う『日本のワインマーケットは、極めて未成熟な状態にある』という理由を説明する必要があります。

 私が日本のワイン市場が未成熟の状態である、しかも極めてという単語を付けてまで強調する理由は、上記の日本のワイン市場は成熟しているという主張に対する私の想像する理由への反論にもなります。

 その反論とは、(1)のなんとなくそう思う、というのは除くとして、

(2)過去10数年にわたって、日本のワイン消費量はほとんど変化していない、に対しては、

 統計上の数字は確かにその通り(脚注1)です。日本人の一人あたりのワイン消費量は、1997〜1998年に起こった例の赤ワインの大ブーム以降は、およそ2リットルで増加の傾向はありません。

 また、すべてのアルコール飲料に対するワインの消費割合は、数量ベースで約3パーセントで、これも10数年変化していません。(金額ベースでは、おそらくもう少しシェアは増加すると思います。)

 しかしこの統計的な事実を根拠として、日本のワインのマーケットが成熟マーケットであるというのは、あまりにも思慮が足りない結論です。これをもとに、

(3)ワインを飲む層はこれ以上増えることはない

が導かれるのだと思われますが、これは(2)の前提が正しいとした場合の推論です。

 (2)の統計数値は、現在の実際の消費数値(脚注2)を示しはしていますが、顕在化していない、潜在的なワイン需要を示しているわけではありません。私は、たとえば発泡酒や第3のビールなどを含めたビール系飲料や清酒に関しては、これ以上の潜在需要を見込むのは難しいと思っています。ですからビール系飲料や日本酒に関しては、確かに成熟した市場であると考えます。それどころか縮小市場であるといえるでしょう。

 しかしワインに関しては、消費者の潜在的な関心は高く、日ごろ飲む機会はあまりないが、飲んでみたいという欲求は潜在的に高いといえます。消費者がそんなに飲みたいと思うのなら、買う場はいくらもあるのでいつでも買えるはずだ、という反論が聞こえてきそうですが、まさにその点が大問題であろうと思います。

 一般的な消費財なら、ほしいと思ったものは、消費者はすでに買っています。しかしワインではそうはいかないのです。それは消費者がいくらおいしいワインが飲みたいと思っても、自分でそのワインを選ぶことが非常に難しいからです。

 ワインという商品は、消費者は独力で自分の好みに合ったワインを選ぶことが難しく、誰か自分の嗜好を知った人のアドバイスが必要です。現実のマーケットでは、それがなかなか達成されていないので、結局消費者はワインを購入するという決断ができません。

 もし日本のワイン売り場のほとんどが、このことを実践していてなおかつ消費の数字に変化がないとすれば、私も日本のワイン市場は成熟している説に賛成いたします。しかし実際には、こうしたワインの売り方をしている小売業は、極めて少ないと言わなければなりません。

 さらに付け加えれば、こうしたワインの売り方に転換した売り場は、みるみるワインの売り上げが上がっているという事実を指摘しておきたいと思います。


(4)売れているワインの大半は1000円以下のワインで、その傾向に変化が見られない

 これも現象としては事実です。しかしこのことは前述の消費者のワインに対する要望とワインの売り方が一致していない結果としての現象です。

 1000円を超えるとワインは売れない、というのはスーパーマーケットの酒売り場を指して言っています。現在の一般的な消費者にとって、アルコール飲料を買うという際に思い浮かべる売り場は、圧倒的にスーパーマーケットです。

 しかし、スーパーマーケットの酒売り場で、消費者が自分の好みに合ったワインにありつけるかというと、そういうことはほとんどありません。スーパーマーケットの主力のワインの価格ゾーンは498円〜798円で、980円となるともう売り上げが下がるようです。

 ところで近年のレストラン・バーの新規オープンは非常に多く、10年前には想像がつかなかったくらいの活況を呈しています。今ではこうした店では、出されるワインが吟味され、ワインのセレクションが顧客獲得の大きな武器となっています。

 レストラン・バーで出されるワインは、スーパーマーケットで売られているワインとは全く違うワインです。しかもかなりの金額になります。しかし消費者は足繁く通っています。

 ここで私が言いたいのは、スーパーマーケットへ来る消費者も、レストラン・バーを訪れる消費者も同じ消費者、つまり同一人物であるということです。

 消費者の大多数は、スーパーマーケットに行って日常の食べ物の買い物をしています。あるいは家族の誰かがスーパーで買ってきた食材で食事をしています。すべての食事を外食でまかなっているという方もありますが、これはかなり少数派でしょう。したがって日ごろスーパーマーケットで買い物をする消費者が、レストラン・バーの顧客でもあるわけです。彼らは同一人物です。

 しかるに、同じ人物でありながら、スーパーマーケットではワインを購入せず、レストラン・バーではかなりの高額の支出をしてワインを飲む。この奇妙な現象をどうとらえたらよいのでしょう。もし、レストラン・バーで飲んだ同じワインを、スーパーマーケットを含んだ小売店頭で買えば、3分の1程度の支出ですむでしょう。しかしそういう選択肢は、日本の消費者にはほとんど与えられていません。

 スーパーマーケットでは、非常に安価なワインしか売れないというのは、売り手側の無策ぶりを露呈しているにすぎません。日本の消費者には残念ながら、好みのワインが手に入る十分な売り場環境が提供されていないため、ワインを買おうにも買えない状態が続いていると見るのが正しい見方であろうと思います。

 こうしたマーケットは、極めて未熟なマーケットだと言わざるを得ません。それにもかかわらず、なぜ日本のワイン市場は成熟しているといえるのでしょう。


(5)日本には世界を代表するほとんどのワインがすでに導入されている

 これも日本のワイン関係者からはしばしば聞かれる指摘です。確かに10年前と比べると、日本の市場には多くの種類のワインが入るようになっています。5年前と比べても同様のことが言えると思います。

しかしながら、『日本には世界を代表するほとんどのワインがすでに導入されている』というのは、あまりにも井の中の蛙的な発言です。現状の日本のワインマーケットでは、それどころかワインの選択の幅が狭く、消費者がワインを比較したりして楽しむのに十分なワインの選択ができないというのが客観的な事実でしょう。

 たとえばオーストラリアやニュージーランド、南アフリカといった国は、世界の主要なワイン生産国ですが、日本の消費者は、それらのうちの極めて限られたワインにしかアクセスできません。また、日本で最もシェアの高いフランスワインであっても、限られた有名なワイン産地のものばかりで、フランス全土にわたる個性的で良質なワインには、日本ではほとんどアクセスできないというのが正直なところでしょう。

 ひとつここ数年、非常に良い品ぞろえになってきていると思うのがイタリアワインです。イタリアワインもしばらく前までは、トスカーナやピエモンテなど、いわゆる有名産地・有名生産者のワインばかりでしたが、最近ではイタリア全土的に、個性的で優れた生産者のワインが多く導入されるようになり、非常に良い環境になってきていると思います。

 今のところ、こうしたすぐれたイタリアワインは、レストランやバーに行かないと飲めないという環境になっていますが、少なくとも消費者にとっては朗報で、イタリアンレストランにとっては、顧客をより満足させ、来店頻度を高めてもらう環境が以前より格段に増しているといってよいでしょう。

 イタリアワインの導入例は、まだまだ例外的で、そのほかの世界ワインについては、世界市場と比べてかなり見劣りがします。その分消費者には選択の余地が狭められていて、このことがワインマーケットの活況の大きな足かせになっていると思います。


 以上かなり独善的なことを申しましたが、日本のワインマーケットはこれから飛躍的に成長する素地を強く持っている、潜在的に優れた市場だと思います。日本の消費者は素晴らしく、彼らが望むワインさえ提供されれば、日本の消費者はワインを購入しようと思っています。その潜在力は極めて大きなものがあると思います。

 日本の一人あたりの年間のワイン消費量はおよそ2リットルです。これは世界で100番目くらいの量になります。

 日本のワインマーケットが果たして本当に成熟していると言えるのか、これ以上ワインを飲む人がいないのか、このことはワインマーケットにおられるワインのプロフェショナルの皆様方にはぜひお考えいただきたいと思います。

 最も悲観的なシナリオは、日本のワイン市場で消費者不在のワイン流通がこのまま進み、消費者がいつまでたってもワインにアクセスできず、ついにはワインが消費者から見放されてしまうという悲劇的なトレンドです。もちろんそうはならないと確信しますが、しかしそれは、ひとえにワインマーケットで活躍される方々のやり方次第であろうと思います。


 WORLD FINE WINESは、これからも消費者の皆様がおいしいワインを飲めるような環境づくりを、マーケットの皆様と進めて行きたいと思います。

(伊藤嘉浩 2010年8月)


(脚注1)
国税庁 酒類課税等状況表

(脚注2)
実際には消費された数字ではなく課税された数字。流通在庫とのギャップはあるが、ここではあえて課税数値という言葉は使わないことにする。



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