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本稿は【Wine Making】【Viticulture】【Marketing】【Wine Talk】の各セクションに収められています。


 ワインの専門用語の使用を考える


専門性が高いと思われる領域では、その領域特有の専門用語がたくさん出てきます。さしずめコンピュータの領域などは、その典型ではないでしょうか。聞いたこともないカタカナ用語が飛び交いますし、アルファベットの省略用語も山のように出ています。

ワインの領域はそこまではいかないのかもしれませんが、ワイン界固有のいわゆる専門用語が多く出てきます。また近年は、英語が幅を利かせるようになって、従来優勢だったフランス語と混在して使われるようにもなっています。

ワインの専門用語を話の中にちりばめて使うと、何やらかっこよく見られたりするようですから、好んで使う人も多いようです。しかし聞いていて、本当にわかって使っているのかという場面に遭遇することもしばしばです。

私にはフランス語の環境がほとんどありませんから、フランス語のワイン専門用語を使われると、わからないことがよくあります。Collage(コラージュ)、Débourbage(デブルバージュ)、Dégorgement(デゴルジュマン)、Elevage(エルヴァージュ)、Ouillage(ウイヤージュ)、Pigeage(ピジャージュ)etc, etc。挙げたらきりがありません。

こうしたフランス語での専門用語が出てくると、私はたいてい混乱してしまいます。ですからその時は、その意味をお尋ねすることになります。ワインはそもそもヨーロッパで造られ、飲まれてきた飲み物ですから、その用語もヨーロッパの言語、とりわけフランス語が支配的だったのは当然と言えましょう。

時が移って現代では、ワインは世界商品になりましたから、その用語は世界各国の言語でも使われるようになってきました。とりわけ幅を利かせてきたのは英語です。ただそうは言っても、すべてのフランス語のワイン専門用語が英語に置き換わったり、英語環境で通用するというわけではありません。

アルファベットを使う言語圏では、フランス語のまま使われる用語は多くありますが、中にはフランス語特有の意味合いを持っていて、他言語にはそのコンセプトがなく、したがってそれを表す言葉も存在しないということもあります。その典型が例のテロワール(terroir)です。

最も困るのが、そもそもワインという文化がない地域の国々でのワイン用語の使用です。日本はその最たる国のひとつです。日本起源のワイン用語というのは恐らくないと思いますから、国外から輸入される用語を、カタカナ語にしたり、漢字の新語を当てたりすることになりますが、余計にわからないということも起こっています。

私がフランス語のMillerandage(ミルランダージュ)というワイン用語を知ったのは、まだ最近のことです。Millerandageに相当する単語は英語にはありません。また英語でそれを表すワイン界の専門用語というのもおそらく存在していないと思います。日本では『結実不良』と訳されているようです。

結実不良といわれると、非常に悪い、ネガティブなイメージを持ちます。しかしよくよくミルランダージュの意味を聞いてみますと、これを結実不良のひとことで片づけてよいものかとも思います。

ミルランダージュというのは、気象環境など何らかの理由でぶどうの花の受粉がうまくいかないで、すべてのぶどうの粒が一様に成長できる状態にはならなかったことを言っていると言います。確かにそれは『結実不良』なのですが、結実不良といわれると、それゆえワインの品質が低下したと連想してしまいます。

 
【写真】 
あるシャルドネのミルランダージュ(Millerandage)

このクローンは、Mendoza clone
(地元では通称Gin Gin)と呼ばれ、
写真のように大きい粒と小さい粒が房の中に混在する
ことから、hens and chicksなどと呼ばれる。
これはミルランダージュのせいで、このクローンでは
ほぼ100パーセント、ミルランダージュが起こる。

このクローンは、西オーストラリア・マーガレットリバー
近辺では優良なシャルドネワインを産するとして、
多くのワイナリーで採用されている。

写真は、西オーストラリア・Pemberton(ペンバートン)の
Mountford Winery(マウントフォードワイナリー)

しかし実際は結実不良(=ミルランダージュ)が起こったからといって、秋に収穫されるぶどうの品質が必ず下がるというわけでもありません。(収量は確かに落ちます。)ぶどう品種によっても違うかとは思いますが、ミルランダージュをむしろ歓迎する生産者は多いということを耳にされた方もあろうかと思います。

ちなみに英語ではこの現象に対して、poor floweringとかpoor fruit setなどという言葉が使われる場合が多いと思います。これはワインの専門用語ではありません。

こうした例はほかにいくらもあろうかと思います。Batonnage(バトナージュ)もそのひとつです。このワイン用語を一言で示す単語は日本語にも英語にもありません。英語では人によっていろいろでしょうが、stirとかagitateとか、その動作を表現するごく一般的な言葉を使うことが多いようです。日本語だと『かき混ぜ』という感じです。

近年は逆に、英語起源のワイン専門用語もたくさん使われるようになっています。trellis systems (トレリスシステム) 、canopy management (キャノピーマネジメント)、microoxygenation(マイクロオキシジャネーション)、etc,etc。Yeast assimilable nitrogen(YAN)、Oxygen transmission rate (OTR)などなど、学術的な色彩を持った用語も多くなっています。

そんなこんなでありますから、私個人は、できるだけワインの専門用語は使わないように心掛けています。しかし、ワインの専門用語を使わないで話したり書いたりすると、冗長になったり、くどくなって余計に聞きづらいことも多いと思いますから、考えてしまいます。

ただ、ふだんワインの専門用語を使わないようにすると、その中身について理解していないと話せませんから、私にとってはとても良い勉強になります。先ほどのBatonnage(バトナージュ)では、ワインメーカーは何のためにそれを行うのか、あるいは行わないのかということが理解されますから、『バトナージュ』という用語を知っている(暗記している)だけで中身のことはよくわからないというより、言葉自体は知らなくとも、その行為をよく理解しているほうがずっと良いのではないかと思います。

よくインポーターの方々などの説明で、『このワインはバトナージュを行っています』とか『このワインはビオディナミです』とかという説明を受けますが、どうもこれは単なる言葉の羅列で、意味のないことのように思えてしまいます。

もしそのワインでバトナージュを問題にするのなら、バトナージュがそのワインにどう反映されているのか、ワインの個性にどう影響を与えているのかということこそが重要でしょうし、ビオディナミで造られたというのなら、そのワインのどういうところにビオディナミの実践が現れているのか、反映されているのかということが重要なことなのではないかと思います。

それにそもそもワインを売る時に(あるいは説明するときに)、バトナージュ云々、ビオディナミ云々という言葉がどれほど必要なのだろうとも思えてきます。


ワインの専門用語を知りたいというご要望はとても多くいただきます。ワインの業界にいる以上、ワイン用語と無縁でいるというわけにはいきません。ワインの専門用語のほとんどは、醸造の領域・ぶどう栽培の領域・テースティングの領域のものです。

この3つの領域はワインの根本部分であり、この部分に触れることなくしてはワインに関するどんな領域であれ、仕事をしていくことは本来難しいことです。この3つの領域はお互いに密接に結びついていますから、この領域をよく理解していけば、これまでとはもしかすると全く違うワインの世界を実感されることと思います。

ワインの専門用語というのは、その広大なワインの世界への入り口となり得ます。是非表面的な言葉の暗記に終始せず、その中身を理解されますことをお願いしたいと思います。

ワインで何か気がかりなことがございましたら、メール・電話などいつでもお気軽にご連絡ください。お待ちしております。


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  『ワイン業界で使われる用語の問題
  『専門用語を使わないでワインを売ってみる
  『ワイン業界の人材育成の重要性と必要性
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(伊藤嘉浩 2016年7月 写真とも)


※ 
本稿は、2014年6月に発行しました『WORLD FINE WINES ニュースレター』に加筆したものです。『ニュースレター』のお申し込みはこちらからどうぞ。



【関連ページ】

ワイン業界で使われる用語の問題
専門用語を使わないでワインを売ってみる
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ワインの根本部分を知ることの意味
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消費者からのワインに関する20の質問―ワインのプロが向き合うべき重要事項』

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