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ワインの根本部分を知ることの意味
私にはワインをお客様に販売する立場のかたがたにとって、ワインを販売していくうえで非常に重要だと思えることが3つあります。ひとつはお客様を快くもてなす接客、ホスピタリティです。(ホスピタリティについては『ワイン販売とホスピタリティ』をご覧ください。)今ひとつはお客様にいかに満足を与えていくかということを念頭においたマーケティングとマネジメントです。 そして今ひとつはご自身がお客様に提供しているワインという商材についての造詣です。今回のワイントークでは、この最後の部分の『ワインについて知る』ということはどういうことであるのか、ということについて考えたいと思います。 ワインの根本部分とは 一般的に商品の流通を考えるとき、消費者とじかに接する販売の現場、つまり小売の段階では、出来あがった商品をその最終生産物として商いをします。ここではその商品の素性や生い立ちに立ち入ることは少なく、一般的には消費者の好みによって商品が選択されます。たとえば1着の洋服を買おうとするとき、その服地の製造工程や原料の調達にまで消費者が関心を寄せるということは極めてまれです。消費者は製品として出来あがって並んでいる商品が自分に合うかどうか、好きかどうかで選ぶわけです。これはまったく健全な消費行動であります。 話をワインに戻しますと、洋服を買うときと同様、消費者がワインを買うときにはそのワインが自分の好みに合うかどうかを基準に選ぶわけで、どのようにしてそのワインができてきたかということは、消費者にとってはさほど重要なことではありません。その意味で消費者にとってのワインの根本は、自分に合うかどうか、自分が好きなワインであるかどうかだと言えそうです。 しかしながらワインを販売する側に立ったときは、ワインを販売するためのバックボーンとしてワインの素性、生い立ちを知ることはきわめて重要な意味を持つと思うのです。つまりは最終生産物であるボトルに詰まったワインの状態からワインの原料となったぶどうの段階までさかのぼる、ということです。 ワインがボトルに詰められて店頭に並ぶまでにはさまざまな段階を経ることになります。ボトルに詰まったワインが流通にのる前は、ワインはワイナリーの中にあります。ワイナリーで瓶詰めされる前はそのワインはタンクや樽の中にあります。タンクや樽の中にあるワインは、実は何回かタンクや樽の間を移動しています。その前はタンクや樽のなかで発酵しています。その前の状態は発酵していないぶどうジュースです。 さらにその前はぶどうの房でぶどうの木にぶら下がっていたのです。そしてそのもっと前はぶどうの実ではなく、花でした。花の前はつぼみです。つぼみの前はほんの小さな芽です。またそのもっともっと前はたかだか10センチほどの接木の苗です。 これらすべての段階の連続した流れが、気候や気象、土地の状態などの自然環境とさらには酵母などの微生物、それに少しだけ人間の手が加わって、これらが複雑に組み合わさって最終的にビンに詰められたワインとして店頭に並ぶわけです。 なぜワインの根本の部分を知ることが重要なのか また一般論を持ち出せば、何かを仕入れて売ろうとしたときに、必ずしもその売り物のことをよく知らなくても実はある程度売れるのというのは事実でしょう。ワインについてもしかりです。事実、従来の日本の十数万件の酒小売業では、ワインのことなどほとんど知らなくてもワインを売ってきたわけです。その結果がワインの全アルコール飲料に対する販売数量シェア2.8%という数字に表れています。 ワインはさまざまある消費財のなかで、きわめて嗜好の度合いが高い商品群です。つまり消費者の選好の幅が非常に広いのです。したがってワインの売り手はその膨大な商品の幅の中から一人一人の消費者の異なった嗜好に対応しなければなりません。そのとき販売者サイドに必要となる最も重要なことのひとつは、いかにコストパフォーマンスの高い商品を扱うかということです。 ワインの根本部分をよく理解することは、消費者により価値の高いワインを提供するうえで避けて通れないことだと私は考えます。世界では年間何十億本というワインが生産されます。中身は玉石混交です。その中から価値のあるものを選び出すにはワインのことを知りよく理解していることが望まれるのです。 どこそこの何とかという有名な人がこういっているから、というだけではまったく不十分です。その人はそのワインのことをよく理解していると思いますが、それを受け売りしている人はそのワインのことをよく理解しているのでしょうか。ワインの元の部分を知ることは、ワインの販売のプロフェショナルにとって、好きとか嫌いとかという主観的な見方から離れ、そのワインが価値が高いかどうかを客観的に判断する大きな助けとなるのです。 ワインの何を理解すればいいのか ワインの事を言い出したらこれはもう切りがありません。現代ではワインについてのあらゆる細かな部分について議論され研究されています。その膨大な分野のすべてを流通に身をおく人たちが網羅するというのは現実的ではありません。そこでそのダイジェスト版を理解することがよいのではないかと思います。 数あるワインのなかでよくできたワインとそうでないワインとが存在します。この両者の違いは何か、その違いはどこから来るのか、こういった素朴で根源的な疑問を持つことがその入り口だと思います。 出来あがったワインの性格、良し悪しを決定付けるのはその原料となったぶどうの出来です。このことを否定するワインメーカーはおそらくいないだろうと思います。つまり良質なぶどうを手にいれることが、よいワインをつくる絶対的な条件だということなのです。 とすると、よいぶどうをつくるためにはどんなことが行われているのか、どういう要素がよいぶどうを手に入れるために必要なのかというぶどうの栽培分野を理解する必要がでてきます。 ひとつの例として、キャノピーマネジメント(canopy management)の重要性が指摘されますが、ぶどう栽培の通年の施策のなかで、キャノピーマネジメントの概念と実践がどうぶどうの質に影響を与えるのかを知ることは非常に意味のあることだと思います。また実際のぶどう栽培の実践のなかでも最も重要な位置を占めるプルーニング(pruning)やぶどうの仕立て方(trellis systems)について理解することもよいワインがつくられるという観点から必要なことでしょう。(キャノピーマネジメントについては、『キャノピーマネジメント』をご覧ください。) ワイナリーのオペレーションに目を転じれば、たとえば二酸化イオウがどういう場面でどのように使われるのかを知り、それがワインにどう影響するのかを理解することや、ファイニング(fining)やろ過(filtration)について知り、それらをおこなう意味を理解することなどもワインをよく知るといううえで必要なことだと思われます。 今ここにあげたことはぶどうの栽培、ワインの醸造、管理を知る中でのほんの一例ですが、最終的に出来上がったワインをテースティングする際、そのワインがどのような軌跡をたどってきたか、たとえばその畑の状態がどうであったか、きちんとしたぶどうがつくられたのか、どうしてこういうワインになったのか、ということを類推することもぶどうの栽培やワイン醸造についての正しい理解があれば、まったく不可能というわけでもないのです。 残念に思いますのは、日本にはワインのこうした根本部分についての情報が非常に少ない点です。日本の流通段階では、個別のワインについてのコメントは目にすることが多いのですが、ワインそのものを包括的に捕らえた情報が不足しているようです。個別のワインを一点一点、点としてとらえることも大切なことではあるのですが、ワインの根本部分は基本的に同じであり、その部分を一つの面としてきちんと把握することは大切なことだと思うのですが、いかがでしょうか。 (伊藤嘉浩)
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