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Home >Winemaking 現代のワイン造りー科学と芸術のはざま この30年ほどの間で世界のワイン造りは、急速に変化しています。最も大きな変化は、ワイン造りに現代科学が導入されたということでしょう。現在ではワイン醸造に使われる機器、設備類の大幅な進歩とあわせて、少なからずワイン造りのバックボーンに科学(サイエンス)が導入されています。 われわれ人類は、7000年以上にわたってワインを飲み続けていますが、なぜぶどうがワインというアルコール飲料になるのかということが解き明かされだしたのは、実はそんなに遠い昔ではありません。 アルコール発酵が、酵母という微生物が関与して起こる生命現象であることを証明したのは、フランスのルイ・パスツール(Louis Pasteur)で1879年のことです。ここから現代科学でいう『生化学(Bio-Chemistry:バイオケミストリー)』の研究が始まったと見ていいでしょう。 現代21世紀のワイン造りは、その当時のワイン造りと比べて相当な違いがあることは明らかです。特にここ30年ほどの変化はワイン造りのあらゆる場面で見られ、それがワインの品質・個性・性格・スタイルなどに大きく影響しています。 さてしかし、このワインの変化がどういうことを意味しているのか、すべての変化が賞賛に値するものなのか、この変化を真のワインの進歩ととらえてよいものか、といったワインに対する非常に根源的な問いかけが起こってきてもいます。 なにやら哲学論争のようですが、現代のマーケット、醸造サイドを含んだ実ワイン界ではしばしば議論が起こるところであり、世界のワイン界では今どんなことが議論されているのか、その一端を覗いてみるのは意味のあることでしょう。 ワイン造りの進歩の一端 実際ワインができるにあたっては、ぶどう果汁さえあればそこに酵母が繁殖してワインができてしまいます。このことは『ワイン造りの本質』(1)の中で述べています。しかし、現代の商業主義の環境にあっては、出来たワインがワインでさえあればよいというわけではなく、そのワインが売れなければなりません。
そこで、確かにワインというものは本質的には『出来てしまう』ものではあるけれども、そのなかでより売れる、つまり消費者により支持されるワインを、人間が積極的に介入することによって造りだそうとする試みが続けられています。 たとえば今では当たり前になっているステンレスタンクの使用も、導入されだしたのは1970年代で、今からたかだか30年ほど前です。ステンレスタンクの導入は、ワイン醸造に数々のメリットをもたらしましたが、なかでもワイン(あるいは果汁)の温度コントロール(具体的には冷却)が容易になったことは、ワインの酒質の向上に大きな貢献をもたらしました。 また、ワイン造りは実は重労働でなおかつ危険な仕事でもあります。重労働の軽減という意味からもさまざまな機器類の開発(たとえばプレス機、ポンプなど)は、ワイン造りを格段に進歩させたといっていいでしょう。 現代のワイン造りの先端 ワイン醸造に関わる機器・設備類の改良は、出来上がるワインに大きな影響を与えたことは疑う余地のないことです。こうした機器類の変化もさることながら、近年ではワインの中身に対して積極的に手を加えようとする手法が見られるようになってきました。 一例を挙げますと、ここ数年特に大手のワイナリーを中心に導入が広がっているものに、microoxygenation(マイクロオキシジャネーション)という技術があります。これは赤ワインの発酵終了後の貯蔵段階で、タンクの中のワインに非常に微量な酸素を通すことによって、ワインをまろやかな口当たりのよいものにしようという技術です。 特に赤ワインは、出来上がって間もない初期の段階では、渋みやごつごつした感じが強く出がちで、飲むのにはもう少しおいておいたほうがよいというワインも少なくありません。中には飲み頃になるのに何年も時間が必要なワインもあります。そこで、microoxygenationの手法を使えば、瓶詰めして出荷した時点ですでにこなれた、飲み頃感のあるまろやかなワインとして消費者に提供できるというわけです。 また、reverse osmosis(リバースオズモーシス:逆浸透圧)という技術を使えば、ワインのアルコール度を調整することも可能です。(この技術は、一般的にはアルコール度を下げるために使いますが、その技術を応用して、アルコール度を上げることを目的として使われることもあります。)これによって思いどおりのアルコール度をワインに設定することができます。 あるいは発酵温度を変えれば、同じ果汁を使ってもずいぶん感じの違うワインになりますし、さらには使う酵母によってもワインの印象は変わります。 ワインに性格を持たせるという観点でいえば、たとえばタンニンの強さを調整したり、色調を調整したり、あるいは酸度を調整するということも可能になっています。さらには、オークチップの使用なども最近のワイン造りで導入されるようになったテクニックです。 最近日本でよく見かける『無添加ワイン』と称するワインも、実際何が無添加であるのか定かではありませんが、もしそれが二酸化イオウであるとすると、発酵前の果汁段階に限って言えば、hyperoxidation(ハイパーオキシデーション)(2)という技術を使えば、その段階では二酸化イオウを添加しないということは可能です。発酵後のワインの管理という点では、二酸化イオウをまったく使用しないというのはかなりリスクを伴うと思われますが、少なくともハイパーオキシデーションを使えば、二酸化イオウの使用量を軽減できるのは確かでしょう。 ワイン造りの変化の背景 概観しましたように、現代のワイン造りは以前にも増して、ワインメーカー・醸造家といわれる人たちの裁量の幅が広がっていることは確かです。それを支えているのがワインに対する科学的なアプローチによる研究と分析、さらには醸造設備の近代化です。これらを持ってして『醸造技術の進歩』ととらえています。 この『醸造技術の進歩』は、密接にマーケットと関わっています。それは、マーケットの需要に応じてワインのスタイルを変化させることが、醸造技術の進歩によって容易になっているからです。売れるタイプのワインにするためには、許される範囲の中でワインを操作するということが行われるようになっていて、特に大量販売型のワインでは欠かせない手法になっています。 近年ワインの醸造をめぐる議論で意見が交錯するのは、ワインを造るに当たってどこまでの操作が許されるのかという点です。ここは議論が分かれるところで、一方の主張は、ワインはできるだけ自然であるべきだというものです。もう一方は、醸造技術やサイエンスを駆使してワイン造りをコントロールするというやり方が、よいワイン(=売れるワイン)を造るには必要だとする主張です。 ワインは出来るだけ自然であるべきだという立場に立つ人々は、ぶどう作りからワイン造りまでの一連の流れのなかで、人間が関われる部分は相対的に少なく、人間が過度にワインに介入し、コントロールすることは結果的によいワインを生まないと考えています。重要なのは、いかにワインをケアするかということで、それは必ずしもレシピどおりにワイン造りをおこなうのではなく、その時々のぶどうやワインの状態を注意深く見ながら、必要と思われる手を打っていくということだと言っています。このアプローチは、数値化したり、ワイン造りすべてにわたって合理的な説明をつけられるわけではないため、こうしたアプローチによるワイン造りはアート(芸術)の領域に近いといえるかもしれません。 かたや生化学、微生物学などをバックボーンにワインの組成を分析し、ワインの生成過程を学術的にとらえ、最新設備を使ってワインをつくり上げていくという手法は、おそらく現在では主流となっていると思われますが、この立場に立つ人々は、よりよいワイン(つまりよく売れるワイン)を造るにはこの手法がよいと考えているようです。このアプローチは、目指すワインのスタイルがあらかじめ設定され、それに向かって手を施していこうとする手法です。 ワインのマーケットサイドからは、醸造の現場がどうなっているか、そこで何がおこなわれているかというのはなかなか見えづらい部分です。近年は、ワイン造りに科学が導入されたことによってワイン造りの手法が大きく変化し、その結果としてワインのスタイルに変化が現われています。ワインの醸造サイドでは、ワイン造りのあり方をめぐってさまざまな意見が聞かれるようにもなっており、それぞれのワイナリーは自分の良しとする手法でワイン造りをおこなっています。 生産者の持つワイン造りに対する姿勢やポリシーが、流通を通じて消費者に伝わるということはなかなか難しいと思われますが、善良で熱心な生産者は、自分たちのワイン造り・ぶどう作りの哲学を知ってほしいと願っています。ぜひ機会があれば生産者の声に耳を傾けてみるといいと思います。 (伊藤嘉浩 写真とも 2006年8月)
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