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Home >Winemaking ワインの品質・ヴィンテージに関して 2題 (その1)ワインの品質と生産量の関係 に戻る (その2)ヴィンテージによる違いがあるワインとないワイン ワインにはビールなど他の飲み物では見かけないヴィンテージ(vintage)という言葉があります。ヴィンテージとは、ぶどうが収穫された年をいいますが、ワインの生産現場ではぶどうが収穫されワインが醸造される時期のこともヴィンテージと言っています。 瓶詰めされたワインのラベルには多くの場合、例えば1990年、2003年などのように年号が記載されていて、そのワインに使われたぶどうがいつ収穫されたかを示しています。特にフランスワインなどではこのヴィンテージが重要な意味を持ち、ワインの出来不出来を判断する上での一つの目安となってきたことは周知の通りです。 従来フランスワイン、とりわけボルドーワインが世界のワインの中心に君臨していた時代は、ヴィンテージの評価は評論家筋の間でも重要な論題でありました。 もちろん今でもヴィンテージの評価論は盛んに行われてはいますが、とりわけオーストラリアワインなどニューワールドのワインが世界市場を席捲するようになった今では、従来ほどのヴィンテージ論議は影を潜めてきているようにも見受けられます。 それと呼応して、確かにラベルに年号は記載されているのですが、どのヴィンテージでもいつも同じ味がするワインが多く登場してきています。これらのワインではヴィンテージによる違いはほとんどないということになります。またこれらのワインの多くは、店頭価格で1000円程度あるいはそれ以下で売られています。 なぜヴィンテージによる違いが生じるのか なぜぶどうの収穫年によってワインの味や風味が変わるのかということについては色々な要素が関連します。が、その根本は、年によって収穫されるぶどうの状態が変わるので、それにしたがってワインの味や風味も変わる、というところにあります。 ぶどうは植物であり農産物ですから、毎年の生育環境が変われば結実する果実の状態も当然の事ながら変わります。たとえ同じ畑から獲れたぶどうであっても、去年と今年とでは気候条件、気象条件、病害虫の発生条件などが随分異なるということはよくあることです。ですから結実したぶどうが去年と今年とでは異なるというのが自然です。とすると、その原料ぶどうから造られるワインも全く同じにはならないというのが自然です。このことからヴィンテージによって、ワインの風味や味が全く別物のように異なるということはないにせよ、違いが生まれるというのは納得のいく話です。 ヴィンテージによる違いのないワインとは ワインにはヴィンテージによる違いがあって当然と書きながら、一方ではヴィンテージによる違いがないワインも多く存在するとは随分矛盾した話です。しかし、確かにヴィンテージによる違いがほとんどないワインというのは多く存在し、最近ではこちらのタイプのワインが幅をきかせるようになっています。ではヴィンテージによる違いがないワインとはどのようなワインでしょう。なぜヴィンテージによる違いがなくなるのでしょう。 こうしたワインが生まれる背景はいくつか指摘できます。それらは、 (1) 大量のぶどうが確保できる環境にある (2) ぶどうの品質に必ずしもこだわらなくてもよい (3) 低コストのぶどう生産が可能な環境である (4) ぶどうの生育環境が、気候的に安定している (5) 原料ぶどうの需給調整と物流環境が整っている (6) ワインの均一化を可能にする醸造上のテクニックがある といったことが挙げられます。これらのワインは、数10万ケース規模あるいは100万ケースを超える規模で生産され、世界市場に配下されていきます。 まず指摘しておかなければならないのは、ヴィンテージに違いのないワインは、特に大きなワイン会社にとっては経営上、非常に重要な商品だということです。こうしたワインは買い求めやすい値段に価格設定され、大量販売に適したワインです。消費者にとっても、こうしたデイリーワインの味や風味が、ヴィンテージが変わるごとに変わってしまっては、買うのを躊躇してしまうかもしれません。 このような大量生産型のワインでは、ワインの品質とか個性よりも、均一性や同一性が求められるのです。調達されるぶどうの量は膨大で、何千トン、何万トンに及びます。こうして大量に調達されるぶどうでは、その品質が高い基準で吟味されるということはありませんから、そこから個性と品質を伴ったワインが生まれるというのは理屈に合わない話となってしまいます。 ワインは毎年毎年こういう形で大量生産されますし、現代の工場生産型のワインでは、ワインの中身についても、許される範囲の中でテクニックを使って、ワインの標準化のためにいろいろな操作をすることが可能となっています。たとえばオークチップを使えば、高価な樽を大量に買うことなく、ワインに樽の香りをつけることができます。あるいは、たとえばタンニンが足りないと思えば、今ではタンニンを足してやることもできるのです。あるいは、少し赤い色が足りないと思えば、もう少しワインの色を濃くしてやることもできるのです。 これらのワインは一般的にこれという個性や特徴を持っているわけではありませんが、さりとてワインとして非常に粗悪だというわけでもありません。きわめて平均的で手ごろだと言えますが、人によっては退屈だということにもなるようです。しかし、価格が手ごろであるため量的に売れているのは確かです。 すべては消費者の選択次第 本来的には、ぶどうが同じ畑から収穫されたとしても、ワインは年によって違いが出るのが普通です。しかし現代では、いつも一定のワインを供給することも可能となっています。そして消費者には自分の好みによってどちらのタイプのワインも選択できるようになっています。 ワインの流通・販売サイドの役割として重要なことは、消費者に対して本来的にはワインはぶどうが収穫された年によって差が出るものであり、その違いを楽しむということもワインの楽しみの一つであることを折に触れて伝えることでしょう。 特に日本の消費者は、消費財に対して品質がいつも一定であることが当然ととらえる傾向が強いといえます。アルコール飲料についても同様で、ビールはその典型です。本来ビールはワインと同様、味わいや風味がとても多様な飲み物です。しかし残念ながら日本ではその多様性を楽しむことはほとんど不可能です。日本で売られているビールは、グラスに注がれてしまえば、それがどんなビールか見分けるのは極めて困難で、消費者も流通もそのことに何の疑問も持っていません。 ワインの販売で、消費者にきちんとした情報を流すということはとても大切なことです。ワインにはヴィンテージによって違いが出るものもあれば、いつも一定なものもあるという情報は、多くの消費者にとって『へー、そうなの』という新鮮な情報です。どちらが良い、悪いの是非論ではなく、その背景などをわかりやすく伝えるということは、消費者にとってその後のワイン選びに良い影響を与えることにもなるでしょう。 (伊藤嘉浩)
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