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Home >Winemaking ワインの品質・ヴィンテージに関して 2題 (その1)ワインの品質と生産量の関係 数ある消費財の中で、ワインほど1本の価格に差がある商品も珍しいと言えます。750mlの同じ量のワインが入ったボトルでも、1本数百円で買える物もあれば10万円を超える物もあり、そのワインの中味に応じて非常に幅広い価格が設定されています。 ワインの価格がどうやって決まってくるのかというのは非常に興味深い論題ですが、ここではその議論は少し横に置き、ワインの生産の観点から生産量の変化とそれに対応する品質の変化について取り上げたいと思います。 ひとつの例を設定してみましょう。ここに1本の非常に良くできたワインがあり価格は5000円です。世界中のワイン愛好家がそのワインを欲しがりますが、生産量は年間2000ケースしかありません。消費者の観点から言えば、そんなに売れるワインなら生産量を増やしたらいいと普通に考えます。例えば5,000ケースにしたらいいと。 確かにそのとおりで、単純に生産量を増やしてそのまた倍の10,000ケースに、あるいは3倍の15,000ケースあるいは4倍、5倍の量を生産することは、ワイナリーにとって別段困難なことではありません。単にぶどうの量を増やして発酵させればよいだけだからです。そしてできあがったワインを瓶詰めして同じラベルを貼れば、ワイン自体の本数はいくらでも増やすことが出来ます。 問題は、それが最初の2,000ケースのワインと同じ質を維持出来るかどうかです。結論から言いますと、品質を維持して量を大幅に増やすことは、非常に難しいと言えると思います。それは多くの場合、量を増やした分の原料ぶどうの質が、それまでのぶどうの質を維持できないからです。従って生産量を増やしてワインの質を維持することは非常に難しいと言えるのです。 高い品質を持ったワインは、必ずその原料が良くなければなりません。良い品質のぶどうは、確かにぶどう畑の立地環境に左右される部分が大きいのですが、ぶどうをどうケアしたかも大きなポイントとなります。同じぶどう畑でもケアの程度が変わればぶどうの出来が変わってしまいます。
ワインの生産量を増やすということは、従来以上の量のぶどうを必要とするということですから、その分をどこかから賄わなければなりません。つまりどこかからぶどうを買うということになるのです。そうなると今まで自分で(あるいは自社で)管理してきたぶどうとは随分違うぶどうが調達されることになり、多くの場合ぶどうの質は落ちることになってしまいます。あるいは違った個性のぶどうが調達されるかもしれません。 自分で育てたぶどうを使って醸造されたワインはエステートグロウン(estate grown)と呼ばれますが、そうしたワイナリーは小規模ながらとても熱心にぶどうを作り、ワインを造っているところが多いのです。もちろんエステートグロウンのすべてが良いということではありません。中には熱心にぶどうを育てていないところもありますから。 実際ぶどうを育てるという作業は非常に手間のかかる仕事で、たったひとりで10ヘクタール以上のぶどう畑を管理するのは困難なことです。ワインの生産量を増やすということは、自動的に畑の面積が増加することを意味し、そうなると自家畑では賄えませんから、誰か他の人が作ったぶどうを買ってワインを仕込むということになるのです。 この理屈で、ワインの量が50,000ケース、100,000ケース、500,000ケースと増えていけば、ぶどうの調達量は膨大となりぶどうでありさえすれば多少のことは目をつぶるということにもなりかねません。 以上のことから大量に生産される原料ぶどうが、高品質なワインを造るぶどうと同水準で吟味されることはないということがおわかりいただけたかと思います。 もちろん、もっと大きな規模のぶどう園、たとえば数10ヘクタールあるいはそれ以上の広さのぶどう園でも、高品質なワインを造っているところはあります。そういうワイナリーは、よほど良い労働力に恵まれ、優れたぶどう園管理者が指揮管理しているところと見ていいでしょう。 ワインという飲み物は、同一ワインでの生産量が増えると、原則としてワインの持つ個性とそれに伴った品質は標準化され、中味は均一化、画一化される傾向が強まります。このことはほぼそのまま価格に反映されています。ですから、2,000ケースの生産量で5,000円の価格を持っていたワインも、生産量が10,000ケースあるいは15,000ケースになれば以前と同じ個性と品質を維持することは難しくなり、必然的に価格は下げざるを得ないということになって、それまでの名声は失われることになりかねません。 最終的にどういったワインを選択するかはまったく消費者の好みの問題です。デイリーワインにはかえって個性的でないワインのほうがゴクゴク飲めていい、という消費者も大勢おいでです。しかし、市場全体が個性の乏しい、ヴィンテージによる差のない、画一化されたワインばかりが幅を利かせるというのは、消費者の選択の幅を大きく狭めてしまうこととなるでしょう。 近年はワイナリーの合従連衡が激しく、買収が日常化しています。エステートグロウンの独立したワイナリーも、大手資本に買収されるというケースが多く見られます。そうした事例の中には、買収前と買収後のワインとではラベルは全く同じでも中味は全く別物というケースも見られます。大手資本は、そのワイナリーが従来持っていた名声を利用して、同じラベルを貼ったワインを従来の何倍もの量を出荷していきます。ぶどうを熱心に育て醸造していた人たちの姿はそこにはなく、ボトルの中味はどこかから大規模に調達したぶどうから造ったワインが詰められ、大量販売されるケースも見られるようになっています。 (伊藤嘉浩 写真共) このページのトップへ戻る Home >Winemaking |
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