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Home >Wine Making > ワイン生産者たちはどんなことに関心を持っているか ワインを商っておられる方々にとっても、ワインの生産者たちが日ごろワインのどんな部分に関心を持っているのかというのは、あまり目が向かない分野であるかもしれません。しかしワイン販売のバックボーンとして、ワインの生産者たちが抱える問題・関心事を概観しておくことは、ワインへの理解を深めるという観点から意義のあることだと思います。 2006年11月にAmerican Vineyard Foundation (AVF)から、ぶどう生産者やワイン生産者がどんなことに関心を持っているかという調査結果が発表されました。この調査は3年ごとに実施されているもので、以下はワイン造りに関してのトップ10です。
実際には35の項目が挙がっていますが、2003年の調査と比べてもその項目・重要度ともほとんど変化がありません。そのことからも、ここに挙げた事柄が現代のワイン醸造においての大きな関心事であるといえるでしょう。また、これはアメリカの生産者を対象とした調査ですが、世界の多くのワイン生産者が同じように関心を寄せている項目であろうと思います。以下簡単にその要点を見ていきましょう。 (1)ぶどう栽培の手法がワインの組成やフレーバーにどう影響を与えるか (2)ワイン醸造の手法がワインの組成やフレーバーにどう影響を与えるか この2項目がトップを占めていますが、おそらくこれはワインを造る上での永遠の命題といえるでしょう。特に近年ではワイナリーの中でおこなわれるオペレーションに大きな関心が注がれるようになっていますが、やはり原料であるぶどうに最大の関心が注がれているのはもっともなことであり、分別のある見方だと思います。 (3)コルクテイントについてどう対処するか この問題は世界のどのワイナリーも問題を抱え、大きな関心を持って見ています。もともとコルクテイント(cork taint)、いわゆるブショネの問題から起こっていますが、現在ではワインに対して果たしてどんな栓を使うのが最適なのかという議論に発展しています。(脚注1)スクリューキャップ、人工コルクなど従来のコルクと違った代替的なワイン栓が登場していますが、どのタイプの栓が優れているのかという客観的なリサーチが続けられる一方で、どのタイプの栓を採用するかというのは、消費者(マーケット)の反応を見ながらの対応になっています。 (4)ワインの熟成中に起こる微生物による汚染の問題 この項目が、ワイン醸造上の問題として実質的にトップに挙がっているのは当然といえば当然でしょう。この問題をもっと限定的に指摘しているのが8番目のブレタノマイセス(Brettanomyces)の問題です。 ぶどう果汁がワインになるためには酵母が必要です。酵母もすべての酵母がワインにとって有用なわけではなく、ワインに悪い影響を与える酵母も存在します。たとえばシェリーには必要な膜をつくる酵母(産膜酵母)も通常のワインには悪影響を与える酵母です。また酵母以外にも酢酸菌、乳酸菌といった微生物もワインに繁殖する場合があります。 乳酸菌はマロラクティック発酵には必要ですが、すべてのワインにプラスに働くというわけではありません。また酢酸菌の繁殖は、まったくワインに対してプラスになることはないといっていいでしょう。 よく、ろ過していないワイン(アンフィルター・ノンフィルターワイン)がより優れているというイメージを持たれたり、それをうたい文句にしたマーケティングを目にしますが、こうしたワインは微生物による汚染が起こる可能性を否定できない(脚注2)ということでもあります。現にワイン生産者はトップでこの問題を取り上げていますし、市場に出荷されたあとのノンフィルターをうたったワインのある部分には問題が起こっていることも事実です。 ワイン生産者にとって微生物管理をどうするのかは非常に重要な命題であるのです。 (5)色調とフェノール類の組成に関して (6)アロマとフレーバーの構成要素に関して このふたつは、ワインを構成する主要素についての具体的な関心です。ここがマーケット的にも非常に重要視されるところでしょう。消費者はじめ、流通サイドから最も関心が注がれるところであり、ワインの味わい・風味の中心部分となるところです。 ワイン生産者は、市場がどういうタイプのワインを望んでいるのか、ということも確かに気にはなっているのですが、おそらく多くのワインメーカーはもっと純粋にどうしてこういう香りが出るのかとか、何が原因で(たとえばそれがぶどう栽培に由来するのか、あるいはワイン醸造のオペレーションで変化することがあるのかといったことなどなど)ワインの個性が変化するのかという根源的な部分に関心を持っているのではないかと思います。 結局この問題は、(1)と(2)の根本的な問いかけに帰着します。 (7)発酵停止や発酵遅延の原因とその対処 この問題はワインの造り手にとってはかなり深刻な問題です。というのは発酵が途中で止まると、ワインに問題が生じるからです。具体的には受け入れがたいにおいが発生したり、微生物の汚染にさらされたりします。悪臭成分はさらに放置すると除去不能になり、ワインとして製品にならなくなってしまいます。また、発酵が止まると果汁(あるいは半発酵状態のワイン)は酸化にさらされることになり、その面からも問題が生じます。 発酵停止や発酵遅延は現代のワイン醸造では対処しなければならない重要な問題ですが、なぜそれが起こるのかそのメカニズムはよくわかっておらず、ひとたび発酵停止が起こると再開させるのが簡単でない場合もあります。発酵停止が起こると、速やかに対処して再開させなくてはならないので、ワインメーカーにとっては大きな関心事であるのです。 (8)ブレタノマイセス(Brettanomyces)の問題 ブレタノマイセス(Brettanomyces)とは酵母の種類で、特にワインの香りに悪い影響を与えるとされるものです。もう少し正確にBrettanomyces/Dekkera(ブレタノマイセス/デケラ)の問題ということもあります。 この酵母の繁殖は、ワインに好ましくないにおいを発生させることになり、ワインメーカーのほとんどが問題視している微生物です。この問題は(4)のワインの熟成中に起こる微生物による汚染の問題のひとつの独立した問題で、多くのワインメーカーが関心を持っています。 この酵母に関心が注がれるのは、多くの場合ブレタノマイセスによる汚染はワインにダメージを与えることになるからですが、最近では、場合によってはワインの香りに個性を持たせることもあるということが指摘されてきてもいて、その方面からも関心がもたれています。 これはブレタノマイセスが作り出すある種の物質が、必ずしもワインに悪影響を及ぼさない場合があるという見方が出てきたためで、ワインメーカーによってはブレタノマイセスを活用しようという動きも見られるようになっています。 しかし、多くの場合ブレタノマイセスの繁殖は、ワインに悪影響を及ぼし、野放しにはできないというのが大方の見方です。日本に輸入されているワインでも、ブレタノマイセスの汚染があると思われるワインはまま見受けられます。個人的な見解として、ブレタノマイセスをワイン醸造において完全に悪だと見ることは出来ないのではないかとも考えていますが、さりとてこの酵母をコントロールして、ワインに個性を与える程度のレベルにその特定の香り成分を調整できるのかどうかは定かではないのではないかと思っています。 いずれにしてもこの酵母に関してはさまざまな議論が進みそうです。 (9)ワインに現われる“未熟”あるいは“青い”フレーバーを取り除く方法 ワインの香りに関する問題です。この場合は特に赤ワインのそれについてです。赤ワインでは“未熟な”とか“青い”、“グリーンな”とよく表現される香りです。これをワインの個性ととらえることも出来ますが、たいていはこの香りはないほうがよいと判断されるでしょう。 おそらくこの香りはぶどうそのものから移行している香りと思われ、それゆえきちんとしたぶどう栽培によって健全で熟したぶどうを手に入れるというのがそのとるべき処方箋でしょう。しかし、未熟なぶどうから造られたワインから出る“青い”香りを醸造のテクニックで取り除けるかどうかということになるとどうだろう、ということになります。すでにその香りの成分は特定されていますが、その特定成分だけをターゲットに何かするというのは難しそうです。 (10)硫黄(イオウ)化合物の検知とその対処に関して これもワインメーカーにとっては非常にしばしば遭遇し、対処をしなければならない問題です。ワインで硫黄(イオウ)と聞くと二酸化イオウを思い浮かべるかもしれませんが、ここでいう硫黄化合物は二酸化イオウではなく、主に硫化水素(Hydrogen Sulfide : H2S)などを指しています。 硫化水素などときくと何かおどろおどろしい物質のように思いますが、ワインの醸造過程では酵母の活動などいくつかの理由で多かれ少なかれ発生する物質です。硫化水素はワインにとって好ましくないにおいを発生させる物質のひとつです。よく硫化水素が多く含まれる温泉地などで鼻にするあの種のにおいです。 市場で流通するワインでは、温泉地ほどの強いにおいが出来上がった製品で感じられることはそれほど頻繁ではないとはいえ、その許容度を越しているワインはまま見られます。私見では流通しているワインのなかで、コルクテイント(ブショネ)と並んで、あるいはそれ以上の頻度で見受けられるネガティブなにおいだと考えています。 ただしこれもブレタノマイセスから派生するにおい(香り)と同様に、ごく少量の場合はかえってワインに個性や複雑性を与えるのでむしろプラスにはたらくと考える生産者もあり、すべてが悪というわけではありません。しかし、その量が許容度を超えると明らかに不快なにおいが強くなり、ワインとして許容されないということになっていきます。 そのためワインメーカーは、硫化水素をはじめとした硫黄(イオウ)化合物の生成の検知とその対処については非常に気を使うのが一般的です。しかし実際には、市場に流通している一部のワインでは、明らかにその対処がされていないと思われるワインが混在しており、輸入者がそうしたワインを吟味することなく仕入れて販売しているという実態があるというのも事実でしょう。 以上、ワインメーカーたちが関心を持っている事柄を簡単に見てまいりました。ワインをめぐる学術的な研究やさまざまなワイン醸造の現場での実践を通して、われわれはワインのことをより知るようになっていますが、ワインを取り巻く『なぜ』の根本部分の解明は容易ではないようです。 WORLD FINE WINESでは、マーケットで活躍される皆様方に、できるだけわかりやすくワインについての情報を提供していきたいと考えています。 (伊藤嘉浩 2007年1月)
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