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Home >Marketing > 消費者のワイン選びのよりどころーぶどう品種別陳列のすすめ ワインを買うに当たってどれを選んだらよいかというのは、ワインを楽しみたいという大勢の消費者にとっていつも大きな問題として立ちはだかっています。これはレストランなどでワインを注文するときも同じです。 多くの消費者にとって、たくさん並んでいるワインの中から、好みのワインを独力で選択するということは大変難しいことです。なぜなら1本1本のワインの中身について、それがどんなワインなのかわからないからです。しかし現状のワイン売り場の多くは、消費者に自力でワインを選択することを求めていますから、消費者は立ち往生してしまいます。 ひとくちにワインといっても中身は多様で、同じ赤ワインであってもBeaujolais(ボジョレー)のような軽くチャーミングなワインもあれば、Cabernet Sauvignon(カベルネソーヴィニオン)やSyrah(シラー)のようなしっかりとしたワインもあります。ワインを購入しようとする消費者にとって、ワインを選択するときに何か基準のようなものを持っていたとすると、ワイン選びはもう少し楽になるでしょう。 なぜ消費者はワインを選べないのか 消費者が店頭でワインを買おうとするとき、まずはそのワインの品揃えをざっと見渡すことになります。その次の行動として、自分の関心のあるワインの並んでいそうなところに移動する、ということになります。 日本の店頭のワイン陳列の多くは、生産国別にグループ分けされています。販売者側としても何らかの基準でワインをグループ分けして陳列することになりますが、日本では伝統的に国別で分けられています。 国別に分類するといっても、圧倒的にフランスワインが占め、次に少しイタリアワイン、残りをその他の生産国が非常に少ない種類で目立たない場所に並べられるというのが一般的のようです。 このタイプの陳列の場合、フランスあるいはイタリアでワインが造られたということはわかりますが、ほとんどの場合消費者は中身についてそれぞれがどんな感じのワインなのかイメージできていません。どんな特徴を持っているのか、軽いのか重いのか、甘いのか甘くないのか、渋みの程度はどのぐらいか。 生産国別の陳列では、そのグループの中のワインの個性がばらばらであるので、結局消費者は自分のイメージしたワインを、そのグループの中から見つけるということが難しくなってしまいます。 消費者がよほどワインのことをよく知っていて、ボルドーの赤ワインはカベルネやメルロというぶどうが主体で、ブルゴーニュはピノノワールだから大体こんな感じだとそれぞれのワインのタイプをイメージできる場合は別です。しかし実際にはこういう判断ができる消費者は少数派です。 たとえばもしラベルにBergeracあるいはChateau de Beaucastelと書いてあったらどうでしょう。ワイン生産地について非常に細かく勉強された方は、それがどういうタイプのワインか判断できるかもしれませんが、ワインが大好きだという消費者がこのふたつのワインの中身をイメージできるとは思いづらいことです。 多くの方がもしかするとChateau de BeaucastelをChateauという文字があることから、ボルドーのワインだと思うかもしれません。イタリアワインにいたっては、ラベルを見てもそれがぶどう品種なのか、生産地なのか、生産者なのか、皆目見当がつかないということになってしまいます。 消費者にとってわかりやすいワイン陳列とは ワインは多種多様ですから、いろいろなグループ分けのやり方が可能です。消費者にとってわかりやすいワイン陳列とは、一目見てワインのタイプがイメージできる陳列です。そのためには、ワインを味のタイプ別に分けるというのが一番です。ではどうすればワインを味のタイプ別に分けられるかというと、それはぶどう品種による分類ということになるでしょう。 ひとくちにぶどう品種といってもその数は多く、そのひとつひとつを細かくグループとして分けるというのはあまり生産的ではありませんが、赤ワイン・白ワインの主要ぶどう品種をざっくりグループ分けして並べると、とてもわかりやすくなります。 ワインの個性はどこから来るのかというのは、気候や土地の環境、醸造方法など多くの要素が関連し、どれかひとつだけに限定するというわけにはいきませんが、そのなかでもぶどうの種類による違いがワインの個性に最も大きく反映される要素だといっていいでしょう。 ワインをぶどう品種別に分けて陳列するとは、具体的には赤ワインではCabernet系、Merlot、Pinot Noir、Syrah(Shiraz)などと大きく分けます。当然この4タイプにすべての赤ワインが入るということはありませんから、それぞれの売り場の在庫・商品構成によりさらにグループを増やしたり、少数派のワインには個別に対応するということになっていきます。 Cabernet系としたのは、Cabernet Sauvignon単体のワインも多いのですがBordeauxタイプのMerlot, Cabernet Francなどをミックスしたワインも多いため、Cabernet系という言葉を使いました。要はワインの個性の方向性がだいたい同じであればよいのです。場合によってはMerlotもCabernet系の中に入れてしまっても違和感はあまりないでしょう。 同様に白ワインもChardonnay, Sauvignon Blanc, Rieslingなどと分けていきます。あとはスパークリングワイン、ロゼワイン、甘口の白ワイン、品揃えが豊富な売り場ならSherryやPort、Madeiraといったものを加えていくということになります。 従来の国別の陳列からぶどう品種別の陳列に変えると、まず赤ワインと白ワインの売り場が別れるということがわかります。消費者にとっては自分の求めるタイプのワインがひとところにかたまっていますから、安心感があり選びやすくなるのです。 また生産国による分類も、グループ分けされた品種の中である程度可能です。 販売側の消費者対応 このぶどう品種別のワイン陳列は、消費者にとって親切なだけではなく、売り手の側にとってもメリットがあります。それはお客様の好みに応じて効率的にワインを提案できるようになるからです。 従来の国別陳列では、たとえばお客様の好みがしっかりとした赤ワインだった場合、カリフォルニアはNapaのCabernet Sauvignon, オーストラリアはBarossaのShiraz, BordeauxのSaint-Emilionの3本を一緒に提案するということは陳列場所が離れているため、販売者側もやりにくい環境です。 ぶどう品種別に売り場が設定してあれば、お客様の嗜好が一致するであろうワインはほぼ同じ場所にありますから、とてもワインが奨めやすくなります。これによりお客様も販売者も売り場を行ったり来たり右往左往しなくても顧客の好みの一致する場所で効率的にやりとりが出来るようになるのです。 若干の留意点 ぶどうの品種によるグループ分け陳列は非常に有効で、ワインの売り上げをアップさせるのに大きな力を発揮しますが、若干の留意点もあります。そのひとつは、いまのところ消費者の多くがぶどうの品種名になじみがないという点です。 日本では未だに圧倒的にフランス、イタリアワインの販売が主であるため、ほとんどの場合ラベルにはぶどう品種名が表示されていません。ですからぶどう品種名になじみがなく、消費者が戸惑うことになるかもしれません。 しかし実際には大きな分類をするぶどう品種はそんなに多くなく、赤白それぞれ上述した3〜4種類程度でしょう。ここで重要なのは、消費者にカベルネソーヴィニオンだのソーヴィニオンブランなどというややこしい、言いにくいぶどう品種名を覚えることを求めてはいけないということです。 この部分はお店の側が丁寧にお客様を導く重要なステップです。ここで消費者に教えてやるといったような態度を微塵でもとれば、この陳列手法は失敗します。しかし、従来のワインのタイプが混在していた国別陳列からぶどう品種による味別陳列への移行は、多少の時間は必要かもしれませんが、消費者にわかりやすさを提供します。 いわゆるニューワールドと呼ばれるワインが、世界市場でこれほどの成功を収めている背景には、その品質のよさが支持されているというのが根本ですが、そのほとんどのワインには品種表示がなされ、今や世界の消費者はそこに書かれた品種名をよりどころとしてワインを選択するようになったということがあります。それによって消費者は複雑な地名や地域区分を読み解くことから開放され、いまでは消費者はそのワインのぶどう品種を見る(知る)ことによって、大雑把ながらワインの中身をイメージするようになっているのです。 ぶどう品種別の陳列をおこなった売り場は、今まで消費者に複雑怪奇、五里霧中と思われていたワインの世界をかなりわかりやすくシンプルにします。この効果は消費者に自信を与え、ワインへのアプローチを格段に積極化させます。ぜひぶどう品種別陳列の導入の検討をされてはいかがでしょうか。 (伊藤嘉浩 2007年8月)
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