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ブショネの原因物質TCAは、嗅覚を減衰させるー大阪大学が研究を発表 【日本】 2013年9月21日


ワインのブショネ(コルクテイント:cork taint)は、ワインの香りにダメージを与える大きな問題だ。近年の研究で、ブショネを引き起こす物質が特定され、その物質の排除がワイン生産者の大きな眼目のひとつとなっている。

その物質はTCA(2,4,6-trichloroanisole:トリクロロアニソール)と呼ばれる物質で、この物質によるワインのダメージをTCA汚染とかTCAテイント・ブショネ(bouchonné)と呼んでいる。

今回、大阪大学大学院生命機能研究科から発表された研究で、TCAは本来ワインが持つことはない不快なにおいの発生源であるという従来のTCA汚染に加えて、ごく微量のTCAの存在が、人間の嗅覚経路を遮断することを突き止めた。

論文を発表したのは、大阪大学大学院生命機能研究科・竹内裕子助教、倉橋隆教授、大和製罐株式会社・総合研究所所長 加藤寛之博士。

研究で、TCAを嗅細胞(生体での嗅覚センサー)に投与したところ、薬理学的にも異例な極低濃度で匂いの情報伝達の中心を担うイオンチャネルタンパク質の機能を抑制することを確認したという。

ワインにおけるTCAの嗅覚検知の閾値は6~8ppt(parts per trillion)というごく微量単位と言われ、それ以下の発生値は人間の嗅覚では検知できないと言われてきた。しかし今回の研究では、閾値以下のTCAの発生であっても、TCAが人間の嗅覚経路を遮断し、においを感じさせにくくするということが初めて確かめられた。

この発見は、TCAが単に悪臭源であるということとは別に、TCAを利用することによって、不快臭を感じなくさせるように使うことができる可能性を示したものと言える。

研究者らは今後の研究で、TCAが嗅覚阻害剤のみならず、痛覚などの感覚遮断剤、チャネル阻害剤の分子設計の指針となることに期待を寄せている。

※ 1
閾値:「いきち」あるいは「しきいち」と読む。知覚感覚などで、検知できる限界の値をいう。

※ 2
ppt:parts per trillionの略。一兆分の一の単位を表す。よくppmという単位を聞くことがあるが、ppmはparts per millionの略で百万分の一の単位。pptがいかに微量かが想像できる。

大阪大学大学院生命機能研究科のわかりやすい論文解説はこちら(日本語)

論文の全文はこちら(英語)
2,4,6-Trichloroanisole is a potent suppressor of olfactory signal transduction, proceedings of the national academy of sciences of the United States of America


※ 
この論文の発表後、新聞をはじめ多くのメディアがその研究結果を報道しました。内容を正しく報道したメディアもありましたが、多くのメディアは間違った報道をしました。

その結果、日本のワイン界ではブショネ・TCAに関して間違った情報が流布する結果となっています。

このことについては、
TCAにはにおいがない??-報道の誤謬 【日本】 2013年11月14日

をご覧ください。

(伊藤嘉浩)




【関連ページ】

TCAにはにおいがない??-報道の誤謬 【日本】 2013年11月14日

コルクテイント(ブショネ)の問題

(ワインでのTCAの発生と影響についてはこちら)
ワインの栓ーコルクかプラスチックか
コルクはワインにとって最良の栓であるのか

ワイン生産者たちはどんなことに関心を持っているか』の3. コルクテイントについてどう対処するか
問題のあるワインを見極める 【第1回】

ワインの栓、初めての国際的な協業による比較研究試験始まる 2009年10月1日』
アメリカソムリエ協会、コルク栓を支持 【アメリカ】 2011年5月11日』

世界のワイン、15パーセントがスクリューキャップに 2009年3月14日
コルクテイント(ブショネ)の比率、1パーセント以下にー最新の調査報告で 【アメリカ】 2009年8月24日
スクリューキャップのワイン、アメリカでも上昇 【アメリカ】 2007年2月16日
使用済みコルク栓のリサイクリング推進プログラム 【アメリカ】 2008年5月13日
最もエコなワインの栓はコルク栓 【ポルトガル】 2009年1月27日

ワインの栓―DIAMコルクの評価が優位に 【アメリカ】 2013年1月20日』



 WORLD FINE WINES ニュースレター  2013年4月2日発行
『ワインの栓 最前線』
と題したニュースレターを発行しています。

スクリューキャップが森林破壊を助長する?? 2010年8月発行 WORLD FINE WINES ニュースレター』もあわせてどうぞ。

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