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ワインの栓をめぐる問題 (その3)
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 ワインの栓をめぐる最近の動き (vol 2)その後の経緯−コルクはワインにとって最良の栓であるのか

テイント(taint)とは、本来あるべき品質が何らかの作用で劣った品質になった、という意味です。コルクテイントとは、コルクがもとで本来のワインの質が劣ってしまった、という意味です。

コルクテイントは一般にはコルク臭のするワインと捕らえられています。具体的な香りの表現としては、カビのような香りであるとか湿った麻袋を放置したときの香りなどと表現されます。またはっきりとしたネガティブな香りではなくても、本来そのワインが持っているはずのアロマティックな香りが失われていることもあります。


コルクに替わる代替栓

単純な議論としては、従来のコルクオークでつくられたコルクを使わなければTCAテイントは起こらないと言えそうです。(TCA:tricloroanisole=トリクロロアニソール;コルクテイントを引き起こす物質)

そこで注目を集めているものに、プラスチックの栓、中間部は従来のコルクでその両端をプラスチックにした合成栓、スクリューキャップなどが登場してきています。

確かにTCAテイントの問題だけを考えれば、従来のコルク栓を使わなければ、いわゆるブショネの問題は解決できそうですが、実は問題はそれだけではなさそうです。現在では、ワインの栓がワインに与える影響は、TCAテイントだけではなく、栓のタイプの違いによる酸化の進みぐあいや褐変の度合い、さらには栓の抜きやすさといった要素が考察されています。最近ではどのタイプの栓がワインの品質維持において優れているのかということがワインの栓のメーカーサイドを含めて大きな議論となっています。

どのタイプの栓がワインにとって、あるいは消費者にとって最適かというのは決定的な結論が出ているわけではありませんが、ここで2000年7月にAustralian Wine Research Institute から発表されたセミヨンを使った14種類の異なる栓を使った打栓後20ヶ月を経たワインの検証結果をご紹介しましょう。


Australian Wine Research Instituteによる検証

この検証は、1種類のスクリューキャップ、2つの異なったグレードの従来のコルク栓、2種類のテクニカルコルク(technical corks―従来のナチュラルコルクにプラスチックなど人工的に作られた素材を組み合わせたもの)、それに9つのプラスチック等の人工樹脂で作られた人工コルク(synthetic corks)を使って行われました。検証された項目は、栓を抜く時の力、抜いたあとの栓の直径の変化、再挿入のしやすさといった栓の持つ物理的側面とワイン中のワインの品質維持に影響を与える成分の変化とそれに伴うワインの知覚検証です。

その結果、二酸化イオウ(sulphur dioxide)とアスコルビン酸(ascorbic acid)の保持の度合いが最も高く、褐変の進みぐあいがもっとも遅かったのはスクリューキャップのワインでした。続いてテクニカルコルク、従来のコルク、人工コルクの順でした。

栓の抜きやすさと再挿入については人工コルクが最も力を必要とし、従来のコルクとテクニカルコルクについては栓によりばらつきがあったということです。実際人工コルクは抜くときに相当の力を必要とし、またいったん抜いたら再び挿入することは難しいという声が多いのは事実のようです。

テースティングによる検証では、ワインの中に二酸化イオウを高く保持していたワインはシトラス系のフレッシュな香りを保っていたのに対し、二酸化イオウの保持の度合いが低かったワインではより熟成した香りや酸化臭が感じられたという結果でした。

またTCAテイントについては従来のコルクとテクニカルコルクの一部に若干見られたのに対し、人工コルクについては問題なかったという結果でした。

レポートでは、この検証で重要なことは、ワインの品質維持とワインの栓との関係を論じる場合、使用する栓のタイプによってワイン中の二酸化イオウの保持の度合いが変化し、品質保持に影響を与えることだと指摘しています。つまり同じワインを瓶詰めしても、ワインの栓の違いによってワインの味や香りが変化するというのです。

ワイン中の二酸化イオウの保持の度合いが低いワインは、酸化や褐変の度合いがすすむであろうことは容易に想像できます。このことは使う栓の密閉性、酸素の透過性とも関連します。また同レポートでは、保存中のワインの香りや味などが変化するのは二酸化イオウの存在だけではなく、低いレベルのアルデハイド類が生成されることにより香り成分が覆われてしまう可能性や、香りの成分がワインの栓の材質に吸収されてしまう可能性も指摘しています。温度変化などで生じる液漏れがもたらすワインへの影響の程度などさまざまな角度からの今後の実証的検証が期待されると同レポートでは言っています。


議論と検証は続く

上述のAustralian Wine Research Institute による検証も20ヶ月という短期のスパンで行われたものです。従来のコルクに替わる代替的なワイン栓が登場して日が浅く、10年、20年単位の長期にわたる検証がほとんどないため、長期の保存時のワインの変化について断定的なことはいえないのが現状です。しかし近年のコルクテイントに対する関心の高まりから、栓の製造サイドの各陣営、ワインメーカー、流通業者、ワインの研究機関を巻き込んだ実証と検証が行われるようになってきています。

現在、意欲的に代替コルクを取り入れているワイナリーはまだ少数派です。多くのワイナリーはワインの栓について大きな関心を持って見ていますが、その多くは従来のコルクからスクリューキャップあるいは人工コルクには切り替えをしていないというのが実情です。これにはコストの面もありますが、やはり従来からのコルク栓が持つイメージと消費者の選好の度合いを注視しての結果だと思われます。


消費者の選好

確かにワインの生産者あるいは流通サイドではワインの栓についての関心は高まっているものの、一般の消費者の間ではワインの栓について特別意識が高まっているわけではないのが現状です。特にスクリューキャップについては、世界的にみても消費者の間からは積極的な支持は得られていないようです。

これは従来スクリューキャップが低価格のワインに使われてきたせいもあり、イメージとしてあまりよいとはいえないのが原因のようです。特に25ドルを超えるいわゆるプレステージワインにスクリューキャップを使われることに関しては抵抗感があるようです。

2002年6月に発表されたポルトガルコルク協会(Portuguese Cork Association, APCOR) のアメリカ、オーストラリア、イギリスの消費者への調査によれば、75%の消費者が従来のコルクを支持し、人工のコルクの支持は9%だったと報告しています。

また、同調査によれば、消費者がワインを選ぶうえで最も重要視する要素は何かという質問に対し、26%の人がコルクのタイプと答え、コルクのタイプがワインを買う上で4番目に重要なファクターであったことに驚きを示しています。

ちなみにワインを購入する際に最も重要視する要件の1位は、過去の経験(70%)、2位;ワインのスタイル(53%)、3位;友人の推薦(30%)でこれら4項目はワインの生産国(22%)、価格(22%)、特別な販促(21%)、ラベルの良し悪し(14%)より上位であったといっています。その他の要件としては、ブランドの名前(21%)、ボトルの形(5%)、広告(2%)、ワイン評論家の推薦(10%)などとなっています。

その反面、57%の人がワインを買うときにワインの栓についての情報がほしいとこたえています。また、ワインの質については、21%の人はワインがよい状態でないのはコルクに問題があると思っています。さらに58%の人がコルクを抜くときにうまく抜けずぼろぼろになってしまうのを、ワインを飲む上での最悪の出来事と言っています。


ワインの栓に対するワイナリーの動き

ワイン生産者のサイドを見てみると、特にスクリューキャップの導入に積極的なのが、オーストラリア、クレアバレー(Clare Valley) のワイナリーとニュージーランドの生産者たちです。ニュージーランドではマールボロ地区(Marlborough)の生産者を中心に全国的な広がりを見せています。

また現在のところ、リースリングやソーヴィニオンブランなどの白ワインへの導入がほとんどで、赤ワインへの導入はわずかです。これは赤ワインの持つイメージの問題と、ワインの長期保存におけるワインの栓による品質差の検証がまだ十分に行われていないためだと思われます。

一方、流通段階では低価格ワインを中心に世界的にスクリューキャップ化がすすんでいます。これは7ドル以下程度の低価格ワインの日常ワインとしての購買層へ、コルクの開けにくさを排除していつでも簡単にワインが開けられるようにとのマーケティング戦略によるものです。

ワインの品質保持のためのスクリューキャップの優秀性が論じられるようにはなったものの、消費の現場ではスクリューキャップのワインは安物ワインとの認識が強く、スクリューキャップの導入を妨げる大きな原因のひとつとなっているようです。実際、アメリカ国内の150のワイナリーへのアンケート調査でも、将来スクリューキャップあるいは人工コルクを中級クラス以下のワインに導入しよう考えているところは50%を超えるものの、プレミアムワインに導入しようと考えているところは少数派です。

たかが「ワインの栓」ではあるのですが、この小さなストッパーをめぐって栓の生産者、ワインメーカー、流通関係者、研究者など多くのワイン関係者を巻き込んだ議論が展開されています。ワインの流通にかかわるものとして、ワインの質に影響を与え得る一つの要素としてワインの栓があるのだということは頭の片隅に入れておいてもよいのではないでしょうか。


(伊藤嘉浩 2005年7月)



                 
 【関連ページ】

ワインの栓をめぐる問題 
(その1)『
コルクテイント(ブショネ)の問題』
(その2)ワインの栓ーコルクかプラスチックか

ブショネ(コルクテイント)の検知

ワインオープナー(ワインの栓抜き)の重要性
ワイン生産者たちはどんなことに関心を持っているか


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