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 ブショネ(コルクテイント)の検知

ブショネをしたワインは、ワインの飲み手にとっては不良品に当たったことになって、看過できないワインです。ブショネの発生はワインの造り手にとっても頭の痛い問題で、ワイン界の大問題の一つとして今も大きく横たわっています。

日本では伝統的にフランス語でブショネ(Bouchonne)と言っていますが、近年世界ではコルクテイント(cork taint)と呼ばれることもあります。少し専門的な感じがしますが、TCAテイントと呼ばれることもあります。ワイン界の現場では、ブショネしたワインを“corked(コークト)”と表現しています。


ワインにブショネが起こる頻度

さてこのブショネのワイン、現在では以前に比べてずいぶん少なくなってきました。私の感覚では、ブショネが発生しているワインは、今から10 年−15年ほど前の 1990年代末から2000年代中盤あたりが最も多かったと思いますが(20本に1本程度は当たった感覚でした)、最近はそのころに比べると だいぶ減ってきている印象です。

しかしそうではあっても時としてブショネのワインに当たることがあって、今も100本に1本ぐらいの頻度、つまり1パーセント程度の頻度でブショネのワインに遭遇している感覚です。またブショネが起こる頻度は、ワインの価格にはあまり関係ないようで、私の経験上では高額のワインにも同様に起こっています。

ブショネのワインの大きな問題は、その発生それ自体が確かに大問題ですが、ワインが汚染されているかどうかが栓を開けてみなければわからない、というところにあります。

   
特殊な技術でつくられたコルク栓・DIAM(ディアム)
コルクテイント(ブショネ)の発生を限りなくゼロにしているとされる

つまりブショネは、生産者の瓶詰段階・出荷段階ではそれが検知できず、さらに流通段階でもそのボトルが汚染されているかはチェックできません。最終的に消費者が栓を開けて飲むまで分からないということになっています。

一般的に、普通のワイン消費者が買ったワインを家で飲もうとしたときに、そのワインがブショネしているかどうかを的確に判定することはかなり難しいといえると思います。しかし全く何も気が付かないかというとそういうわけではなく、原因は特定できないけれども、なんか変だと不満を抱えて飲むということは往々にしてあると思います。

ですが家庭の消費者から確信を持ったブショネのクレームというのは出しづらいので、ブショネは罪深いと言えます。


レストラン・バーでのブショネしたワインへの対応

さて、消費者がレストランやバーなど料飲店でワインを飲む場合はどうでしょう。この時にブショネしたワインに当たったとしたら…。

本来は、レストラン・バーで出されるワインはブショネの汚染があるかどうか、吟味の上出されるべきですが、これがなかなか行われず、多くの場合素通りして消費者に提供されている印象を受けます。

私がなぜそう思うかというと、ワインのプロフェショナルの方々の試飲会で、ブショネのワインが出されているにもかかわらず、非常に多くの方がそれに気づいていないという光景をよく目にしているからです。

そのワインがブショネをしていると認識していても、何も言わずにそのままテースティングを続けておられる方もあるかとは思いますが、見ておりまして、そういう方は少数だろうと思います。

そうした方々の中で、消費者(来店客)にはどうせわからないからブショネを検知できなくても問題ない、と発言される方が時々お見えになります。私はこの種の発言を聞くたびに、暗い気持ちになります。

私はこういう発言をされる方が、ワイン界の多数派だとは全く思いませんが、しかしそもそもブショネの検知ができないという方は、結局のところ ブショネのワインを堂々とサービスしているということになりますから、たとえ消費者を軽視していなくとも五十歩百歩の感じを受けます。

かくいう私もその昔、ブショネに関して手痛い目にあったことがあります。当時私は、ワインをテースティングする上で、お決まりの何かきれいごとをちりばめるというようなことに注力していて、ワインを客観的にきちんとテースティングするということをしていなかったのだとその時思い知りました。

ワインにはいろいろな物質が生成されていて、それが個性だとする主張は当然あると思いますが、ブショネの生成物質はワイン本来は持たない、明らかな外部由来のしかも異臭です。したがってこれをワインの個性と見ることはできません。


ブショネの検知とその限界―原因物質TCAについて

ブショネの検知というのは、その気になってワインを見ないと難しいです。ですからブショネが分からない方は、ワインのプロといわれる人でも、 もしかすると生涯認識しないかもしれません。

ですがひとたびその匂いを認識するようになると、ブショネのにおいが分かるようになっていきます。ただこれは自分勝手なテースティングではなかなかできません。ブショネに限らず、ワインのテースティングは、ぜひそのことを本当に理解して正しく認識している方と一緒に、ワインを共有してされるのが良いと思います。

ご案内の通り、ブショネの原因物質はTCA(trichloroanisole:トリクロロアニソール)という化学物質です。この物質の閾値 は10ppt程度だといわれています。


閾値=『いきち』、あるいは『しきいち』と読みます。検知できる限界値を言います。この場合は、人間が感知できる限界値を言って います。


ppt=parts per trillion(1兆分の1単位)の略。よく微量を表す数値でppmという単位を目にしますが、これはparts per million、100万分の1単位の尺度です。


TCAはpptという極微量の発生でも検知されるということですが、世界のワイン界ではかねてより閾値以下のTCAの発生が、ワインに与える影響が指摘されてきました。発生量が閾値以下ですから、人間にはいわゆるブショネのにおいとして感知できません。

しかし一部のワインに、ブショネの臭いはしないけれども本来のそのワインの個性と違うワインに出くわすことがあって、もしかするとこれもブショネのなせる業ではないのかという指摘です。

こうした現象には私も時々遭遇することがあって、ブショネのにおいはないけれども、何かがそのワインに起こっているのではないか、閾値以下のTCAが何かワインに影響を与えているという指摘は、もしかすると当たっているのではないかと疑っていました。

この疑問に大きな答えをくれたのが、2013年に大阪大学・竹内裕子准教授(当時助教)、倉橋隆教授、大和製罐株式会社・総合研究所所長 加藤寛之博士によって出された論文でした。それは、ごく微量のTCAの存在が人間の嗅覚経路を遮断することを突き止めた、という研究でした。(文末リンク)

それによると閾値以下のTCAの存在は、人間の嗅覚能力を遮断・減衰させるというのですから、テースティングしているワインがフラットに感じる、あるいはいつものワインと違って香りのたちが弱いと感じるのは、実はそういうことだったのかと納得がいった次第です。

ただしそのワインは、よく知っているワインだからおかしいと思えるのであって、初めてテースティングするワインでは、もともとそういうワインなのだと思ってその指摘はできないだろうと思います。

ということは、TCAの発生は閾値より上であっても下であっても、ワインに大きく影響するということになります。

TCAの発生が閾値以下の場合は、たとえTCAが発生していてもそれ自体の感知はできません。しかし明らかなTCAの発生の検知は、ワインのプロフェッショナルにとってする必要があります。特にレストラン・バーなどで直接消費者にワインをサービスする方にとっては必須項目です。

ブショネ(コルクテイント)の問題は、実ワインでの検知とともに、ブショネの発生原因、ワインの栓の問題と現況、世界のワイン界がこの問題にどう向き合っているか、マーケット・消費者の反応はどうか、といったこともあわせて探っていかれると良いと思います。


(文末リンク)
ブショネの原因物質TCAは、嗅覚を減衰させるー大阪大学が研究を発表 【日本】 2013年9月21 日』

上記、大阪大学発表論文に関して、日本の多くのメディアが誤った報道をしました。それについては、
TCAにはにおいがない??−報道の誤謬 【日本】 2013年11月14日』

(伊藤嘉浩 2016年2月)


本稿は、2015年7月発行の『WORLD FINE WINES ニュースレター』に加筆・転載したものです。『ニュースレター』のお申し込みはこちらからどうぞ。




【関連ページ】

TCAのワインへの発生機序については、
ワインの栓をめぐる問題 (その2) ワインの栓ーコルクかプラスチックか

コルクテイント(ブショネ)の問題
ワインの栓―DIAMコルクの評価が優位に 【アメリカ】 2013年1月20日』

問題のあるワインを見極める 【第1回】』
問題のあるワインを見極める 【第2回】

ワインの香りを嗅ぐということ

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