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この記事は、【TastingWine Making】両方のセクションに掲載されています。


 ワインメーカーのテースティング


  ワインのテースティングは、ワインの流通と販売に関わる人々にとって最も重要な事柄のひとつです。しかし一口にテースティングといっても、その人の置かれたポジションによって、ワインを見る視点が若干異なるというのも自然なことです。たとえば、インポーターの立場でするテースティングと、レストランなどの料飲店の立場でするワインのテースティングでは、多少ワインを見る視点が変わるかもしれません。

  小売業の立場でするテースティングもまた少し視点が異なっているかもしれません。しかしいずれにしても共通しているのは、流通・マーケットにいる人は皆、最終的に商品として市場に出荷されたあとのワインをテースティングしているという点です。

  ワインメーカーのテースティングは、ワインが最終商品として市場に出荷される前の段階のテースティングになりますから、この点で流通の各段階にいる人たちのテースティングとずいぶん異なる場合が出てきます。

  ワインメーカーがどういうところに視点を置いてワインを吟味しているかを知ることは、ワインを仕入れて販売する人々にとっても、役に立つ部分が少なからずありそうです。ワインメーカーがどんなテースティングをしているのか、少し見てみましょう。


最初のテースティングはぶどうから

  ワインメーカーのテースティングは、実はアルコールとなったワインだけではありません。ワインメーカーのテースティングというのは、ぶどう畑からすでに始まっているのです。ぶどうの味を見るというのは、ワインメーカーにとって非常に重要なことで、その年のぶどうの状態を知り、その性格を把握し、その良し悪しを判断し、収穫日を決めるのに重要な役割を果たします。ワインメーカーの多くは、収穫前のぶどうを何度もサンプリングして、品質を確かめていることでしょう。

  収穫されたぶどうはぶどうジュースになりますが、ここでもワインメーカーはジュースのテースティングをしています。たとえばよく、標準的な価格のスタンダードワインとプレミアムとかリザーブと銘打たれた価格の高いワインがありますが、その選択としてまず初めにこのジュースの段階でどちらに回るのかが決定されることが多いと思います。


ぶどう果汁からワインになる段階でのテースティング

  ジュースとなったぶどう果汁は、徐々に発酵していって発酵が完了するとワインと呼ばれることとなります。ワインメーカーにとって、この段階のテースティングは極めて重要な意味を持ちます。

  発酵というのは、単に糖がアルコールに変化するというだけではなく、そのほかにも非常に複雑な反応が発酵過程の中で起こっていて、いろいろな物質が生成されてきます。

  そのなかには、ワインにとって好ましくない物質が生成されることもあり、それらを的確に検知することはワインメーカーにとって最も重要なことであるのです。もしこの段階で、テースティングを怠ったり、テースティングをしたとしても問題を検知できなかったりすると、品質の劣ったワインになったり、最悪の場合商品として出荷できないという事態にもなりかねません。

発酵途中のワインサンプル。左から
Sauvignon Blanc, 2種類のクローンの違うChardonnay, Pinot Noirのロゼ

  この段階でワインメーカーが最も気を使うのは、香りの成分です。ひとつの例として硫化水素(Hydrogen Sulfide:H2S)の発生(脚注1)がありますが、この物質の生成はほとんどの場合ワインの香りにネガティブにはたらきます。硫化水素はいくつかの理由でワインに現われうる物質ですが、これを放置しておくとさらに別の物質へと変化し、ついにはワインではあるけれども非常に不快な香りが出て売り物にはならない、ということになってしまいます。(驚くべきことですが、この不快臭を持ったワインにたまに市場で出くわします。)

  不快成分は硫化水素などの硫黄化合物に限らず、そのほかにもいくつかあります。VA(volatile acid:揮発酸)と呼ばれるものなどもそのひとつです。ワインメーカーのするテースティングで非常に重要なことは、第一にワインの品質にマイナスを与える要素を見極める、というところにあります。


ワインになった後のテースティング

  ワインメーカーは、発酵が完了して果汁がワインになった後も、さまざまな段階でテースティングをしています。いつもワインに問題が発生していないか神経を使っていますし、時間の経過によるワインの変化を注意深く見ています。

  ワインメーカーのテースティングで最も決断を要するのは、ブレンディングのときかもしれません。ワインをブレンドするという意味合いは、ワイナリーによってかなり違う可能性があります。たとえば大規模なワイナリーの場合では、まったく異なった地域や、まったく違う個性を持ったワインをブレンドしてひとつの商品としてリリースするということがおこなわれるでしょうし、小規模のワイナリーの場合は、中身が同じワインでもどの樽のワインを選択し、ブレンドするかという意味でブレンドという言葉を使うかもしれません。

  この場合のブレンドは、同じワインが入った樽が複数ある場合には、樽の個性などによって一樽一樽ワインの性格が異なるため、一樽一樽のワインの個性を見極めながらのブレンドになります。

  ブレンドのテースティングによる判断は、ワイナリーの規模の大小に関わらず、リリースされた商品の売れ行きに関わる大きな決断であるので、議論が交わされる大きな場面でもあり、ワインメーカーにとっては重い責任を持ったテースティングです。

  こうして見てきますと、ワインメーカーがしているテースティングは、一般的なイメージで捉えられているテースティングとはずいぶん違います。ひとくちにワインのテースティングといっても、造る立場・商う立場・楽しんでワインを飲む消費者の立場とその違いによって、ワインを見る視点がかなり異なるということが言えるのではないでしょうか。


  ごく大雑把で断片的ではありますが、ワインメーカーはこんなテースティングをしているという一端をご紹介しました。マーケットにおられる皆さんと共有できる部分は限られるかもしれませんが、中でもワインの欠点を判断するというテースティングは、ワインの流通・販売に身をおく人々にとっても役に立つ部分だと思います。是非より良質なワインの取り扱いが進みますことを期待いたします。


【お願い】

WORLD FINE WINES on line では、テースティングの表現とりわけ香りに関する言語表現を敢えて積極的に記述していません。それはここで『〜のような香り』と表現しても、私の言っている香りとこのサイトをご覧になっている方が思い描かれる香りが一致しているとは限らないからです。もし一致していないとすると、その方は正しくない情報を正しいものとして受け取ってしまう可能性があります。

蛇足ですが、最近Brettanomyces(ブレタノマイセス)(脚注2)の香りについて言及している場面を試飲会などで見かけるようになりました。個人的な見解ですが、現状のマーケットでどれほどの方が本当にブレタノマイセスの香りを指摘できるのか、疑問を感じます。

ワインのテースティング、とりわけ香りの判断については、ぜひその香りを本当にわかっておられる方と一緒にテースティングをして、その香りを共有されますことを強くおすすめします。

WORLD FINE WINESでは、折に触れテースティングを開催いたします。ぜひご参加ください。


(伊藤嘉浩 2007年5月)


【脚注1】
硫化水素の発生については、
ワイン生産者たちはどんなことに関心を持っているか』の10番目の項目をご覧ください。

【脚注2】
ブレタノマイセス(Brettanomyces)については、
ワイン生産者たちはどんなことに関心を持っているか』の8番目の項目、あるいは『専門資料のご提供』をご覧ください。


【関連ページ】

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