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さらに増えるAOC, 流れに逆行? 【フランス】 2006年9月21日

フランスの公的なワイン呼称管理団体INAO(Institut National des Appellation d’Origine)は、Orleans, Orleans Clery と Chaumeに新しくAOC(Appellation d'Origine Controlee)の資格を与える。

過去1〜2年の間でもいくつかの新しいAOCが設定されている(1)が、近年フランス国内からもAOCのあり方とその運用に関してさまざまな議論がおこっている。ひとつの大きな議論は、AOCシステムが現在ではうまく機能しなくなっていて、かえってそれがフランスワインの弱体化に拍車をかけているというものだ。

現在の世界のワイン市場では、ヨーロッパ産以外のワインが急拡大している。それはとりもなおさず、今までフランスワインをはじめとしたヨーロッパワインを飲んでいた消費者が、それ以外のワインにシフトしていることを示している。

その理由のひとつとして、ラベルの表示問題がしばしば論議されている。AOCのシステムのもとではぶどう品種が表示できず(アルザスを除き)(2)地名が表示されるため、世界の消費者にとって中身がどんなワインなのか見当がつかずわからない。それに対し、オーストラリアやチリなどのいわゆるニューワールドワインでは、ラベルにぶどう品種が書かれ、消費者にとってわかりやすい、というもの。

フランスワインでは、ワインの持つ個性や品質をはかるうえでの第一の価値基準を『ワインがとれた場所』に与えているため、地名こそがワインを表す最も重要なファクターであるということになっている。

しかしながら現在460を超えるAOCをラベルに表示してみたところで、フランス人ですらわからないのに世界市場の人が理解できるはずがない、だからフランスワインは売れないのだというフランスワイン生産者からの叫びも大きくなっている。

現在の世界のワイン市場では、フランス流の価値基準ではないワインが選択できるようになり(つまり土地の個性に最重要の価値を与えない)、多くの消費者がフランス流でない価値基準を持ったワインを選択している現状がある。

フランスを筆頭とするヨーロッパワインの危機的状況を打開するための『EUのワイン大改革』(3)が2006年内にも実施に移されようとしているが、AOCの増産は改革の流れに逆行する守旧的な動きだとする声も聞かれる。


(伊藤嘉浩)


【参考ページ】

(1)南フランスに新しいAOC誕生
(2)アルザスワイン、ラベルに品種名を表示しなくてもよいことに
(3)ヨーロッパのワイン、大改革を断行へ

アペラシオンシステムは意味がない?
余剰ワインを工業用アルコールに転換、EUが補助金支出
フランス農業大臣、フランスワインの危機的状況に対する具体的施策に言及
新しいフランスワインのカテゴリー創設の議論が再燃
ワインの年代測定を放射能測定技術で可能にーごまかしの発見に期待


【関連ページ】

テロワール(terroir)について
ぶどうのとれる場所とワインの個性

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