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テロワール関連 4題
(その1) テロワール(terroir)について テロワールという単語はワイン界においてはしばしば聞かれる言葉です。フランス語で、terroirと綴ります。この言葉はフランス語特有の単語のようで、たとえば英語にはこの『terroir』の意味をそのまま表わす単語はありません。日本語にもどうもフランス人の言う『terroir』とぴったりと一致する概念の単語は見当たらないようです。 言葉というものは多分にその言語圏の持つ文化や環境を反映しているらしく、その国の人が日常何の説明を加えることなく当然のこととして使っている言葉でも、国や文化圏が変わるとそれに当てはまる言葉や概念がないということはよくあることです。 たとえば、日本ではことあるごとに『がんばって』という言葉を使います。別れ際のちょっとしたあいさつなどでも『じゃあ、がんばってね』と日常的に言っていますし、病気の人やこれから何かに挑戦しようという人にも『がんばって』とか『しっかりね』と声をかけます。 ところが英語圏では日本語の『がんばって』に相当する言葉がないのです。敢えて探せば、“You can do it.”とか“Cheer up.”とかぐらいでしょうが、しかしこれらの言い回しは、日本人が日常言っている『がんばって』の感覚をそのまま反映しているかというと、少し違うような気がしますし、英語圏ではこれらの言い回しがそれほど日常的に使われているわけではありません。どうも英語圏では、日本人が普通に使っている『がんばる』という概念をあまり持ち合わせていないようです。つまり概念や発想がなければ、それを表す言葉も存在しないというわけです。 ワインの世界で使われる言葉は日本語特有のものはほとんどなく、たいていは直訳的に新語を創ったり、そのままカタカナで表わしたりしています。その中には業界内部で日常的に使われる言葉でも、実はその概念や意味はいまひとつ判然としない、というものもあるように思われます。そのひとつに『テロワール』という言葉が挙げられます。 テロワールの概念 先にも書きましたが『テロワール(terroir)』はフランス特有の概念のようで、英語圏の人はその言葉の意味を理解しません。英語にはterroirと同義の単語がないからです。したがってワインの中でテロワールに言及するときは、その言葉のもつ意味・概念からはじめなくてはなりません。日本でも状況は同じであろうと思われます。 私自身もフランス的、あるいはフランス人的環境や発想はまったく持ち合わせていませんから、彼らの言う『テロワール』の概念を、フランス人のような体感的・感覚的な意味で理解していません。しかし、現代のワイン界において『テロワール』という語句はしばしば登場しますから、その語句を持たない言語圏や文化圏の人にとって、その言葉の持つ概念や意味を把握しようということは意味のあることでありましょう。 二つのテロワール テロワールというフランス語の単語には、二つの意味があるといいます。ひとつは『土壌』という意味です。この意味でなら日本人でも英語を話す人たちでも説明なしに理解できます。この意味でterroirを使えば、日本語では“土壌”、英語では“soil”です。 しかし、ワインについて話すときに使われる『テロワール』は、単に『土壌』だけを指し示しているのではなく、『テロワール』という言葉の持つもう一つの意味で使われるというのです。それは、おおよそ次のようなことを言っているようです。 その極めて大雑把な説明は、テロワールとはぶどう(ひいてはワイン)が生まれてくる環境全体を指すのだ、というものです。つまりぶどうが生育する環境が違えば、たとえ同じ種類のぶどうを植えたとしても、出来上がるぶどう(したがってワイン)も異なる、という考えです。 では、環境といっても具体的にはどんなことを言っているのか、というのが次なる質問として上がってきます。つまり何が収穫されるぶどう(出来上がるワイン)に違いを与えるのか、というその要素の説明です。 おそらくフランスのぶどう生産者(ワイン生産者)にとって、この手の質問は彼らを苛立たせるものであるのかもしれません。というのは、そんなことは彼らの長い長いワイン造りのなかではなんら説明を必要としない自明の概念なのであって、それをいちいちどの要素がどうで、それがどうぶどうやワインに影響するかなどということを、分析的に説明を加えるなどということはナンセンス極まりない、ということであるかもしれません。 事実、ブルゴーニュのある高名なメゾンのオーナーがこの質問を受けたときに『テロワールはテロワールだ。』と憮然と答えたと聞いています。しかし、そもそも彼らの言うテロワールの概念を持ち合わせていない人たちにとっては、彼らの頭の中にある概念や感覚を具体的に理解すようとすることは意味のあることでしょう。 『テロワールとは何か』という問いに対してしばしば引用されるシンプルな答えは、『土地(土、土壌、大地)の要素』、『気候の要素』、『人的要素』を総合したぶどう作り・ワイン造りの環境をいう、というものです。 この説明は、同じぶどう品種でありながらどうして出来上がったワインに違いが出るのか、という根源的な疑問に対して非常に説得力のあるものです。ヨーロッパのワイン産地、とりわけフランスでは、何世代にわたり(時には何世紀にわたり)ぶどう園が引き継がれ、ワインがつくり続けられてきたという環境の中で、経験的にぶどうができる土地の違いによって出来あがるワインの個性が異なるということが、整理・分類されてきたのは明らかなことと思われます。 彼らは、ワインに違いをもたらす要因は、土地の持つ性格の違いだけでなく、畑の位置による寒暖や陽のあたり具合、雨の量や風向き、湿度などの気候条件も大きく関与していることを経験的に認知してきたのでしょう。 またワインの出来不出来は、そのぶどうやワインのつくり手によっても影響を受けるということも、長年の比較の中で明らかであったと思われます。しかしそうは言ってもやはりその概念の中心には『土地』の要素が強く意識されたのは確かでしょう。 彼らは、ぶどうができる場所によって出来上がるワインの個性が変わる原因を、経験的・体感的に認知し、それらの違いを『土地』『大地』『土壌』という意味を中核に持った『テロワール』という言葉で概念的に使ってきたのでしょう。 先に日本語にもテロワールに該当する単語は見当たらないと書きましたが、このように考えてきますと、日本語の『風土』という言葉はフランスの人たちの言う『テロワール』の感覚に近いものがあるかもしれません。 (伊藤嘉浩) (その2) 現代のブドウ栽培とテロワールにすすむ
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