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テロワール関連　４題

（その1）　テロワール(terroir）について　に戻る
（その2）　現代のブドウ栽培とテロワール　に戻る
（その3）　ぶどう栽培とワインの個性ーテロワールとの関連で　に戻る

（その4）　土壌がワインの個性に影響を与える要因 現代のぶどう栽培、とりわけニューワールドといわれるぶどう産地では、フランスほど『土壌』そのものをその中心に据えていないようです。それよりもむしろ『気候』などの外部要因が与える影響のほうが中心的に議論されています。 それは、フランスのようにそれぞれ隣り合う小さな畑の区画について、出来上がるワインの違いを比較していないという背景的な違いは確かにありますが、近年の科学的なアプローチにより、ワインに個性を与える要因は、温度や湿度、太陽光の強さなど外部的な気候要因のほうがより大きいということが知られるようになっているからです。 特に光合成による糖の生成過程は重要です。またぶどうへの水分供給の度合いも、ぶどう（ワイン）の質に影響を与える要因として重要で、水分供給を適度に少なくしてぶどうにストレスを与えたほうが、色づきがよく良質なぶどうが収穫できるということもわかっています。 このぶどうへの水分供給は、土壌の物理的な組成と関連します。ぶどうと土壌の関係で重要な部分はここに表れてきます。 土壌の組成とルートシステム(root system) 植物の生育にとって最も重要なのは、水と光です。この二つがないと植物は生存できません。ここではその二つのうち、土壌との関連で『水の供給』を取り上げることになりますが、問題は、どういった水分供給が結果的によいぶどう、すなわちよいワインに結びつくのかということです。 水分供給と土壌の組成の関係はわかりやすく、要は土壌が水分を蓄える程度の問題です。つまり、小石や砂の多い土壌は水分の保持が低く、粘土のような密な土壌は逆に水分の保持が高いことになります。 すなわち土壌の水はけの程度により、ぶどうの根への水分補給の程度が変わり、それがぶどうの生育状態に影響するというわけです。先に述べたように、ぶどうの水分補給は若干少なめであるほうが良質のぶどうが期待できるとすると、そのためには排水のよい土壌のほうがよいということになってきます。 　　　　　　　ぶどうのルートシステム（root system) ぶどう自身は自分は良質なワインになろうという意思を持って生きているわけではありませんが、水分が不足気味の土壌においては、ぶどうは生き延びるために水分を探して、根は深く土中に伸びようとします。 その結果、根は土中に水源（water table）を探し当て、適度な水分補給に成功するのです。したがって一般的には、ぶどうはこうした土壌環境におかれたときにより良質なぶどうを結実する、ということになります。 小石混じりの表面土壌 粘土質の表面土壌 ウォーターロギング（waterlogging） ウォーターロギングとは、水はけが悪く水分が停滞してしまうことです。元来ぶどうは水はけのよい土壌を好みますから、水分が貯留している場所では根は弱り、根腐れを起こしやすく、結果として樹勢を弱め、良質なぶどうとならなくなってしまいます。 ウォーターロギングは表面土壌と表土近くの土壌（subsurface）でのそれが重要で、特に表面土壌は砂礫で水はけがよくても、その下の土壌が水はけがよくないと悪影響が出ることにもなりますから、水はけを改良できる場合はしたほうがよいということになります。 概観しましたように、現代のぶどう栽培においては、土壌のタイプはその水はけの程度がどの程度であるかに注目が注がれ、土壌を構成する物質のタイプによってワインのタイプが決定されるというより、土壌の水はけの程度によってぶどうの出来が左右されるといったほうがよさそうです。 これらのことから、現代のぶどう栽培では、土壌はぶどうの生育にとって欠くことのできない重要要素ではあるけれども、それが最も大きくぶどう（ワイン）の質や個性に関わっているかというと、気候などそのほかの要素もそれ以上に大きく関わっている、と見ているようです。 （伊藤嘉浩） 　　　　　　　　　　　　　　　このページのトップへ 【関連ページ】 テロワール関連　４題中 （その1）　テロワールについて （その2）　現代のぶどう栽培とテロワール （その3）　ぶどう栽培とワインの個性ーテロワールとの関連で Viticulture（ヴィティカルチャー）とは Canopy Management（キャノピーマネジメント）について ワインの品質・ヴィンテージに関して　2題 （その1）ワインの品質と生産量の関係 （その２）ヴィンテージによる違いがあるワインとないワイン

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