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テロワール関連 4題


(その1) テロワール(terroir)について に戻る
(その2) 現代のブドウ栽培とテロワール に戻る

(その3) 現代のぶどう栽培とワインの個性ーテロワールとの関連でー


AOCの概念

従来のワイン界とりわけフランスワインにおいては、ワインの品質や個性・価値をはかるときは、ワインが(ぶどうが)とれた場所が限定されればされるほどよりワインは個性的になり、価値も高まる、という考えがその中心をなしていました。

AOCの概念は、まさにこのことを言っています。非常に広い範囲のAOCのなかに中分類的なAOCが設定され、その中にさらに限定的な地域を規定する小さなAOCを設定するという具合です。

この概念は、AOCの面積が大きくなればなるほどワインの個性は失われてジェネリックになり、AOCの面積が小さくなるほど、ワインは個性的になるというものです。その最も小さな単位は個別の『畑』という小区画で、したがって個別の畑のワインが最も個性的であるのだ、ということになります。

ただし、ひとつひとつの畑ですべて熱心にぶどうが作られ、ワインが造られているわけではありませんから、その個別の畑単位でもさらにグランクリュなどといった格付けがされているのです。

いずれにしても、ぶどうがとれる(ワインができる)場所が限定されればされるほどワインの価値は高くなるというAOCの概念は、テロワールの概念を基盤に出来上がっているとみて間違いないでしょう。

そしてこの考え方がワインの品質や価格を決定するうえで、長い間にわたって機能してきたのは間違いのないことです。

一方、現代のぶどう栽培の考えから見て、よいぶどう(したがってよいワイン)がとれる条件とはどんなものかという議論が、従来のワインの価値決定基準を超えてされるようになっています。次にこのことを見ていきましょう。


土壌の違いがワインの個性を決定するのか

もし、テロワールによるワインの違いが、一般的に土壌の違いからくるとすると、それでは土壌の何が違いをもたらすのかということになってきます。土壌の化学的成分なのか土壌の物理的な仕組みによるのか。


 写真 1 沖積土壌
     (alluvial soil)
写真 2 黄色い粘土層の上に砂混じりのローム層がのった土壌(sandy loam over yellow clay)

このことはワインの品質とブドウ栽培を考える上で重要な問題ですが、幸いなことにこの問題については科学的なアプローチが進んでいます。おそらくこの問題について先鞭をつけたのは、ボルドー大学のGerard Seguin教授だと思われますが、その後フランス国内はもとより、世界のワイン産地で研究が進められています。

Seguin教授は、有名シャトーを含むボルドーの土壌を調査し、なぜあるシャトーは名声を博し、ほかのシャトーはそうではないのか、その理由はどこにあるのかを明らかにしようとしました。

その結果、良質なワインを産する畑は共通して、土中の栄養分が総体的に貧弱であることを発見し、それらの畑はその代わりぶどうの根が土中深く進行していたのです。これらの畑は、大方は酸性の小石交じりの土壌で、高いカリウムのせいでマグネシウムが欠乏し、低い窒素レベルでありました。

とは言うものの、更なる調査の中でSeguinは、土壌中の化学組成はワインの品質に特別に影響を与えるわけではないと結論付けています。良質なワインは、酸性土壌からもアルカリ土壌からも中性土壌からも生まれ、化学組成的にはバランスがとれ、多少栄養状態が欠乏しているような土壌から生まれるようだと言っています。

同時に、逆説的になりますが、ボルドーのグランクリュの表面土壌(top soil)には、窒素・リン・カリウムといった有機物が豊富で、これはこれらのシャトーが動物の糞などの有機肥料を買うことができたからだと言っています。ただしこれは土壌の表面に限ったはなしで、土中の話ではありません。

結論的には、Seguinは、『ワインの品質と土壌の化学的組成・栄養分になんらかの因果関係を見出すことはできない。もし何かの因果関係が認められるのなら、優れたワインを造るのは簡単だ。適当な化学物質を補充してやればよい。もしそうであるならどこでもすばらしいワインが出来ることになる。』と言っています。


それでは土壌の重要性というのはどこにあるのか。今ではその答えは土壌の物理的な組成にある、ということで一致しています。つまり重要なのは、土壌のカルシウムやマグネシウムといった化学的な組成ではなく、土壌を構成する物理的な組成がどうぶどうに水分供給をするかによってぶどうの個性が変わるというのです。このことを次に見ていきましょう。


ちょっとコラム

ワインのフレーバーと土壌の関係について従来からいろいろと言われてきました。たとえばシャブリは石灰質土壌から造られ、それがゆえに特有な火打石臭やカチッとしたミネラルを思わせる香りがある、といったたぐいのものです。

しかし実際には、土壌に含まれる個別の成分(たとえばカルシウムであったりマグネシウムであったり)が、出来上がるワインの香り(フレーバー)に影響を与えるということはない、というのがほぼ大勢の見方です。まだ議論の余地は若干は残されてはいるものの、現代のワイン専門家でこのことを信じている人はかなり少数派といえるでしょう。



(伊藤嘉浩)


          (その4) 土壌がワインの個性に影響を与える要因  にすすむ


              (その2) 現代のブドウ栽培とテロワール に戻る
              (その1) テロワール(terroir)について に戻る

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