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RidgeのPaul Draper(ポール=ドレーパー)氏、引退を表明 【アメリカ】 2016年7月1日


カリフォルニアのRidge Vineyards(リッジヴィンヤーズ)のPaul Draper(ポール=ドレーパー)氏が、2016年7月1日を持って引退した。

ポール・ドレーパー氏は、世界のワイン界の誰もが認める最高峰のワインメーカーのひとりとして常に注目され、傑出したワインを造り続けてきたが、80歳になったのを機に引退を表明した。

Ridge(リッジ)のワインが一躍世界のワイン界に躍り出たのは、例の1976年のJudgment of Paris(パリの審判)だった。『パリの審判』は、名だたるボルドーのシャトーをカリフォルニアのワインが打ち負かしたというので大変な反響を呼んだワイン界の一大センセーションで、RidgeのMonte Bello(モンテベロ)もその1本だった。

極め付きはその30年後の2006年、当時と全く同じワインで再度比較が行われた際も、上位をすべてカリフォルニアワインが独占し、そのトップはRidgeのMonte Belloだった。この結果を見て、カリフォルニアワインは熟成しないと主張した人たちも、沈黙せざるを得ないこととなった。(文末【関連ページ】参照)

このふたつの出来事はエポックメーキングなことだが、ポール・ドレーパーが50年に及ぶワイン造りで行ってきたことは、いつの時点でその場面を切り取っても、常に最良・最上のぶどう栽培とワイン造りを継続して行ってきたということだ。

Ridgeといえばポール・ドレーパーと条件反射的に名前が出る。ポール・ドレーパーの偉大さは世界のワイン界で比類なきものだが、彼には20年来 Ridge Vineyardsでともにワイン造りを共有してきた非常に優れた人たちが存在する。

Eric Baugher、John Olney、David Gatesらがそれで、リッジで20年にわたりドレーパーとぶどう栽培と醸造をともにしている。特にこの10年以上は、彼らはドレーパーと一体化して、リッジの畑と醸造のすべてを知り尽くし、共同でワイナリーを運営している、とRidge Vineyardsの取締役である黒川信治氏は話す。(黒川氏自身も1999年以来、栽培と醸造を手掛けている。)黒川氏は、ドレーパーは引退するが、それによってリッジのワインが変化するわけもなく、これまで同様リッジはリッジのワインを造り続けると話す。

引退を表明したドレーパー氏は、今後も取締役会の会長としてRidge Vineyardsに残留する。また、新しいCEOはMark Vernon氏が引き継ぐ。

Ridge Vineyardsは、実は日本の大塚製薬の完全所有のワイナリーで、日本ではその販売をグループ会社である大塚食品が担っている。日本ではその所有者ゆえの謙虚な販売姿勢もあり、世界市場でリッジが取り上げられるような強い印象はないかもしれない。

世界では時折、ワインの専門家に対して『死ぬ前に飲みたいワイン』というアンケートが行われる。偉大な過去のヴィンテージものも含めそうそうたるワインが挙がるが、たいてい誰か何人かがその中でRidgeのMonte Belloを挙げてくる。

Paul Draper 氏は、2013年Winemakers’ Winemaker Award(ワインメーカーの中のワインメーカー)を贈られている。(3人目の受賞で、それ以前にPeter Sisseck (Dominio de Pingus, Spain)、Peter Gago (Penfolds, Australia)、その後にAnne-Claude Leflaive (Domaine Leflaive, Bourgogne)、Egon Müller(Weingut Egon Müller-Scharzhof、Germany)。)

ポール・ドレーパーはRidge Vineyardsを文字通り山の最高部(Ridge)に導いた。ドレーパーは引退したとしても、リッジのワイナリーでは彼の血脈が流れ続けることになる。

(伊藤嘉浩)

ポール・ドレーパー氏の引退声明は下記でご覧になれます。
  『ポール・ドレーパーの引退声明』(日本語・大塚食品Ridge Vineyards ホームページ)
  “Paul Draper Ridge CEO & Winemaker to Retire”(ドレーパー氏による声明 英語)


 【コメント】

リッジの一連のワインを賞賛するのに、私は何の躊躇もありません。リッジは、そのフラッグシップであるMonte Bello(モンテベロ)をはじめ、Lytton Springs(リットンスプリングス)、Geyserville(ガイザーヴィル)など一連のワインを産出していますが、どれもその水準の高さに驚きます。

リッジのワインには、表面的な美辞麗句で表すことをためらわせる、ワインの本質が感じられます。いつもそこにそのぶどうがあって、ワインの造りの軌跡があり、その根底にはRidgeの持つワインに対する意志を感じます。Ridgeの持つワインに対する意志というのは、すなわちPaul Draperの意志とか哲学のようなものなのだろうと思います。

リッジのワインに世界の高い評価が与えられるのは当然だと思いますが、日本ではあまりクローズアップされていない印象を受けます。リッジのワインは、いくつかの時流に乗ったワインのように喧伝されるわけではないため、なかなかそこに行きつけないのかもしれません。

リッジはZinfandel(ジンファンデル)をとても重要視していますが、リッジのジンファンデルはこれまで飲んでこられたジンファンデルとプリミティーヴォ(Primitivo)のイメージを一変させるかもしれません。

リッジと言えば何と言っても赤ワインですが、私は実はシャルドネにリッジのもうひとつの神髄を見るような気がしています。リッジのシャルドネは供給が少ないせいもあってあまり話題になりませんが、赤ワイン同様極めて優れたワインだと思います。

ポール・ドレーパーという傑出したワインメーカーが、50年にわたって築いたRidge Vineyardsの現場から退くというのは大きなニュースですが、同時にポール・ドレーパーが築いてきたワインとワイン造りの思想は、彼が家族と呼ぶ優れた人たちに、すでに深く引き継がれていることを知り、安堵もしました。

リッジとリッジのワインをこれからも見ていきたいと思います。

(伊藤嘉浩)




【関連ページ】

Judgment of Paris, 30年後のテースティング結果―再びカリフォルニアワインが上位に 【イギリス、アメリカ】 2006年5月26日』
2015年のワインメーカーの中のワインメーカーにEgon Müller氏 【ドイツ】 2015年3月19日』

【訃報】
シャトーマルゴーのポール=ポンタリエ(Paul Pontallier)氏、死去 【フランス】 2016年3月29日』
Anne-Claude Leflaive(アンヌ・クロード=ルフレーヴ)氏、死去 【フランス】 2015年4月9日』
Hubert de Montille(ユベール=ド・モンティーユ)氏、死去 【フランス】 2014年11月4日』

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