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生物多様性会議COP10とワイン 【日本】 2010年10月13日


生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、2010年10月11日から10月29日まで名古屋で開かれています。

会議の主要テーマのひとつとして、遺伝子組み換え作物の生態系への影響の問題が議論されているそうです。

遺伝子操作の問題は、かねてより世界で大きな議論が繰り返されていますが、ワイン界も例外ではありません。現にすでに遺伝子操作されたワインが市場に投入されていますし、ぶどうや酵母、乳酸菌といったワインに関わる生命体に対しての遺伝子操作の研究が、世界のそこここで行われています。

遺伝子操作の大きな論点は、COP10でも議論されている通り、ひとたび遺伝子操作された生命体が自然界に投入されたときに引き起こされるかもしれない、生態系への影響でしょう。

ワインに関しては、ML01と名付けられた遺伝子操作された酵母が、すでに商業ベースで使われています。この酵母は、乳酸菌の遺伝子が組み込まれていることから、一次発酵であるアルコール発酵が起こっているのと同時並行で、マロラクティック発酵(乳酸発酵)が起こるという酵母です。

これまで自然界ではそうした酵母は存在しなかったわけですが、今後もしこの酵母が自然界で生息していくことになれば、好むと好まざるとにかかわらず、ワインにマロラクティック発酵が強制的に起こってしまうかもしれません。

ぶどうの遺伝子操作でも、たとえば植物以外から取り出されたある気質を持った遺伝子が組み込まれ、病害虫に耐性を持ったぶどうをつくる研究が行われています。

病気にも害虫の被害にもあわないぶどうができれば、それは夢のような話です。ワインの品質を低下させる根本要因が取り除かれることになりますから、生産者、マーケット、消費者ともいいことづくめに映ります。しかし果たして本当に何の問題もなく、もろ手を挙げて歓迎できることなのかどうか。

私には今のところ、ワインについての遺伝子操作に、何の問題もないと言える確信がありません。

ワインの遺伝子操作は、潜在的な火種としてワイン界に存在しています。ワインの遺伝子操作の問題は、ワインの生産者、流通関係者、消費者、研究者の間で情報が共有され、オープンな場で議論されることが重要ではないでしょうか。COP10の開催がその糸口になると良いと考えます。

(伊藤嘉浩)



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