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Chポンテ・カネのセカンドワイン、AOCの認証を得られず 【フランス】 2014年10月31日


ボルドー・メドックの格付けワインChâteau Pontet-Canet(シャトー=ポンテ・カネ)のセカンドワインLes Hauts de Pontet-Canet(レゾー ド ポンテ・カネ)の2012年ヴィンテージのワインが、通常名乗ってきたAOC Pauillac(ポーイヤック)を名乗ることが出来なくなった。

これは、ワインのリリースの直前に行われるテースティングで、テースティングパネルより、AOCを名乗るのにふさわしくないと判定されたため。

この決定により、ポンテ・カネの2012年のセカンドワインは、フランスのワイン格付けカテゴリーでは最下位であるVin de Franceを名乗ることとなった。

ポンテ・カネのオーナーAlfred Tesseron氏は、『理解できない。私の30年のワイン人生でこんなことは初めてだ。』と語っている。また同時に、『幸運にも私の顧客たちは私に全幅の信頼を寄せてくれ、注文のキャンセルはほとんどない。』とも語った。

実際世界のワイン業者らは、ポンテ・カネのセカンドワインにAOCの名前が書かれていてもいなくても、大した問題ではないと言っているようだ。それよりもそのワインがPontet Canetが造ったワインであることが重要だとしている。

このワインはプリムール売り(en primeur)で取引されたが、あるワイン商は注文を入れた顧客(消費者)にそのことを告げたところ、彼らは問題にせず、ワインを喜んで引き取ると答えたという。

2009年から実施に移された『EUのワイン大改革』に付随して、フランスワインのカテゴリー分けが見直され、AOCの認定にはそのワイナリーとかかわりのない第三者によるテースティングが導入された。そのテースティングパネルは、地域のワイン生産者・ネゴシャン・ブローカー・ワイン醸造家らによる混成機関となっている。

これはワインにAOCの認証を与えるには、そのワインがその地域のAOCの個性を持っていなくてはならないという考えに基づく。今回のポンテ・カネのセカンドワインは、典型的なAOCの個性を持っていないと判断されたようだ。

最近は、フランス全土的にオーガニックワインやビオディナミワインが増え、AOCを認定するテースティングパネルからワインが拒否されるケースが頻発しているという。その結果、その生産者は再度AOCのステータスを得るのに手続きと費用をかけるより、最下位ランクのVin de France(旧 Vin de Table)を選ぶケースが多いとされる。

AOCのステータスをラベルに表示する重要性は、そのワインが販売される市場によって重要度が異なるようだ。フランス国内では、AOCを名乗ることは、ワインがその地域のテロワールを表していると考えられているため、非常に重要視される。

しかしフランス以外の各国市場では、AOCのシステムがよく理解されず、ワインの名前がより重要だとされる。

フランスのAOCシステムがそもそも機能しているのかというのは、かねてより問題提起されている大きな議論だ。結局のところ、消費者が良いと言えば、それを否定する根拠は見つけづらいのではなかろうか。

Château Pontet-Canetは、1855年のメドックの格付けではPauillac(ポーイヤック)の5級とされたが、近年では実力は2級レベルだとして高値で取引されている。またPontet-Canetは、 2005年以降ビオディナミ(biodynamics)を導入していることでも知られる。


【コメント】

フランスのAOCのシステムをめぐる議論は、その是非を巡ってさまざま意見が交わされています。AOC制度は、消費者にとってはほとんど理解不能と言えますし、もはや品質の保証制度でもないとの指摘は多くあります。ただ生産者とシステムを統括する組織の観点からは、ワインはその土地の個性を表すものだというフランスの伝統的な考え方があり、フランスの上級ワインは、AOCシステムの下で差別化されるということになっています。

イタリアやスペインも似たようなシステムを導入しましたが、フランスのAOCシステムのような権威性はなく、生産者もかなり自由にカテゴリーを選択しているというのが実態です。優秀なイタリアワインのすべてがDOCGのステータスにこだわっているわけではなく、敢えてIGTやVino da Tavolaを選択していることは周知のとおりです。

オーガニックワインやいわゆるビオディナミのワインが、場合によってAOCに認定されないというのは、全く理解できないわけではありません。というのはそうしたワインの中に、粗悪なワインが混在しているのは事実で、AOCはもはや品質保証ではないとはいうものの、ワインの個性を表していない(つまりどこで造っても低レベルで同じ)ということになれば、AOCとしては認められないというのは理解できる気がします。

Pontet-Canetは、2012年ヴィンテージから発酵にアンフォラ(amphorae)を使い始めたのですが、そのせいでVAの生成量が増え、それがAOCの規制値を超えたのではないかという憶測もあるようです。

しかしポンテ・カネがそうしたワインを造るとは思いづらく、是非一度その2012年のLes Hauts de Pontet-Canetを試飲してみたいものだと思います。

(伊藤嘉浩)




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