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ヴィンテージはもうどうだっていい―ヒュー・ジョンソン氏が発言 【イギリス】 2007年11月16日


世界で最も著名なワイン専門家の一人、イギリスのHugh Johnson(ヒュー=ジョンソン)が、ワインのヴィンテージをうんぬんするのはもはや大して意味のあることではないと発言した。

これはジョンソン氏がイギリスのタイムズ紙に語ったもので、今では数々の栽培技術の進歩により、もはや悪天候や病害虫の被害によってぶどうがだめになるということはなくなった。だから、今ではどの年もよい年なのだ、と述べている。

消費者が1本のワインを選ぶ上での基準はさまざまだとしながらも、「知ったかぶり」あるいは「俗物根性」がワインを選ぶのに大きく関わっている。もしボルドーワインがノンヴィンテージだったとしたら、たとえそのワインが素晴らしいワインであっても誰も買わないだろう、とも述べている。

なおこの発言をめぐってのジョンソン氏自らの考え方は、2008年1月号のDecanter誌(発売は2007年12月5日)に掲載される。この発言については、すでに世界のワイン界の各方面から賛否両論の声が寄せられている。

Johnson: vintages don't matter any more, Decanter


【コメント】

実際にヒュー=ジョンソンがどういう理由でこの発言したのか、もう少し詳しくその背景や意図を確認しなくてはなりませんが、この発言に対する私の第一感はイエスでもありノーでもあります。

たしかに近年、20年30年前になされていたようなヴィンテージ論議はなくなってきていると思います。特にカリフォルニア、オーストラリア、チリなどのニューワールドのワインやイタリア、スペインあるいはフランスの中でもラングドック・ルーションのワインなど、世界の多くの産地のワインについて、ヴィンテージによる差を重要テーマとして取り上げるということはあまりないでしょう。

結局ヴィンテージ論議の中心は、ボルドーとブルゴーニュということになりますが、それすら過去に行われていた議論からはずいぶん縮小しているように見受けられます。わたしはこれは、それぞれのヴィンテージの差が以前に比べて縮小している、つまり安定してきているからだと見ています。その意味でジョンソン氏とは似た見解をもっています。

ただ、なぜ各ヴィンテージが安定してきたのかという理由については、少し意見が異なります。ヴィンテージ安定論議の前提として、以前に比べて極端な不良の年がなくなってきたという事実があることは確かだと思います。

そのうえでジョンソン氏は、ヴィンテージに大きな差がなくなってきた理由を、栽培技術の進歩としているようですが、私は、醸造技術の進歩(それを本当にワインにとって進歩といってよいのかどうかはわかりませんが)によって、よくないヴィンテージのぶどうでもそこそこのワインとして出荷できるようになった、という要素のほうが大きいのではないかと考えています。

わたしは冷涼な気候帯でぶどうの栽培を行っていますが、もしジョンソン氏が本当に『今では数々の栽培技術の進歩により、もはや悪天候や病害虫の被害によってぶどうがだめになるということはなくなった』と述べたとすると、違和感を覚えます。私は、本当はヒュー・ジョンソンはそうは言っていないのではと思っています。(確かめなくてはなりませんが)

ジョンソン氏の指摘するもうひとつの論点、「知ったかぶり・俗物根性論」(英語ではsnobbery)については、よほど腹に据えかねるものがあるのでしょう。ジョンソン氏は、本当はヴィンテージの差などわからない人たちが、自分はヴィンテージの差に精通していて、さもこれ見よがしに自分にはその違いがわかるとその優越性をひけらかしながら、ヴィンテージについてうんちくを述べるその姿が我慢ならないのでしょう。

(伊藤嘉浩)


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