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EUのワイン大改革、行方はいかに 【EU】 2007年7月6日


いよいよEUのワイン大改革案が実行に移されるかどうかの正念場を迎えている。この大改革案は1年以上前にEU委員会(EU Commission)によって提案され、2007年早々にも実行に移されるはずのものだった。

改革の骨子は、ヨーロッパのワイン産業が疲弊し、ヨーロッパ以外のワインに市場を奪われ、その結果として売り先のないワインを巨額の税金を投じて買い上げるという負の連鎖を断ち切り、競争力のないぶどう生産者に退場してもらって、彼らに垂れ流していた補助金をワインのプロモーションに使い、ヨーロッパワインの再生を図るというもの。

ワイン改革の主な中身は以下の事柄となっている。

補助金政策の廃止
 売れなかったワインを買い取り、それを蒸留することに費やす費用の廃止。売れ残りワインの輸出補助金および売れ残りワインの貯蔵に支出していた補助金の廃止など。

ワイン醸造時の補糖の禁止
 すべてのワイン生産者は、純粋にぶどうだけからワインを造るべきで、できの悪いぶどうに大量の砂糖を加えて発酵させることを禁止する。

ぶどう畑の閉鎖計画
 今後5年間で200,000ヘクタールのぶどう畑を削減する(当初の予定は400,000ヘクタールだった)。そのインセンティブとして奨励金を拠出し、ぶどう畑を早く閉鎖した者ほど大きい奨励金を受け取ることができるシステムにする。

ワイン醸造について
 EU内のワイン醸造は、OIV(Organisation Internationale de la VIgne et du Vin:ワインに関する国際的な組織)で採用されている基準に準じるようにする。また、国際的に採用されているワイン醸造方法でワインを醸造することを、域外に輸出するために認める。ただし、発酵させるためのマスト(ぶどう果汁)の輸入とEU域外のワインを域内のワインとブレンドすることは、引き続き禁止する。

ラベルの表示ルール
 EUの高品質ワインは、それぞれ固有の生産地域から生まれるというコンセプトに基づく。しかしながら今回初めて、生産地域を明示しないワインについては、ラベルにぶどう品種名を表示できるようにする。これは消費者からの要望に応えるためだ。

そのほか、販売促進と情報提供についての予算組みなどが改革案の中身として示されている。


EUのワイン部門は域内全体で360万ヘクタールを占め、これはEU内の農地面積の2パーセントに当たる。またワイン産出量は域内の農業生産の5パーセントを占める。EU内のワイン消費は年を追うごとに確実に減り続けており(ただし、高品質ワインは伸びている)、さらに過去10年間、EU域外からのワイン輸入は、毎年10パーセントずつ増加している。その反面EUからの輸出はほとんど増えていない。また、2010年にはEU内の余剰生産ワインは全生産量の15パーセントに達する見込みだ。


CAP Reform: wine reform will help Europe regain lost market share, EU Commission


【コメント】

WORLD FINE WINESでは、この問題に大きな関心を持って昨年来成り行きをお伝えしています。それは世界のワイン界にとっても日本のワイン界にとってもEU内のワイン、とりわけフランスワインの行く末は大きな関心事であるからです。

EU委員会の改革プランは、ヨーロッパワインの再生のための大なたですが、ぶどう生産者たちの抵抗はすさまじく、暴動も勃発しています。さらに、EU内各国の足並みの乱れもあり、一筋縄ではいかないようです。

現在では世界のワイン産地は、オーストラリア、アメリカ、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、ニュージーランドと世界中に拡散し、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなど、伝統的なワイン生産国は防戦一方となっています。

このEU委員会の改革プランが実行に移せるのかどうか、世界中が注視しています。


(伊藤嘉浩)


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