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南アフリカ、濃縮果汁によるワイン醸造の認可を検討ーEUへの輸出をどうする 【南アフリカ】 2010年8月19日


南アフリカで、ぶどうの濃縮果汁をワインの発酵時に水で薄めて、それを発酵させることを許可する法律が検討されている。

この法律案はすでにSouth Africa's Wine and Spirit Board(南アフリカワイン・スピリッツ委員会)を通過しており、政府内での検討に移っている。このまま検討が進めば、1011年末には法制化され適用が可能となる見通しだ。

ところが現在EUとOIVは、濃縮果汁によるワイン醸造を認めておらず、この方法によって造られたワインはEUに出荷できなくなるおそれがある。

南アフリカのワイン生産者らは、濃縮果汁を水で戻して発酵させることは、品質を上げるためで、量を求めるものではない。またこの方法は、最近の高アルコールワインからより低いアルコール度を求めるトレンドとも合致するとしている。

南アフリカは、今や世界の主要ワイン生産国だ。特にヨーロッパ各国への輸出は近年急増している。一部からは、この方法がEUの規制に抵触するということを、考慮に入れなかったのではないかという声も聞こえる。



OIV:ワイン醸造とぶどう栽培に関する技術的・科学的な領域を扱う、各国政府が加盟する国際的な組織 L'Organisation Internationale de la Vigne et du Vin(英語表記ではInternational Organisation of Vine and Wine)



【Behind the Scene】

濃縮果汁使用の問題は、そもそも何をもってワインというのかという根本問題をはらんでいます。

現代では科学技術の進歩により、ワインにも過去にはなかった様々な手法が適用されるようになっています。たとえばスピニングコーン(spinning cones)やリバースオズモーシス(reverse osmosis : RO)などはその一例です。これらの技術はどちらもアルコール度数を下げるために使われます。

こうしたテクニックは、アメリカなどの一部ワイナリーでは使われていますが、現在EU域内では“実験的に”という条件付きで、2パーセント以内のアルコール度数の調整が認められているものの、商業ベースでは認められていないようです。

濃縮果汁を戻すといっても、どこまで戻すのか、あるいはそれに使う水はどういう水であるのか、様々な議論が起こりうるところです。

世界市場では、たしかにこれまでは高アルコール化一辺倒だったトレンドに、最近一部で回帰傾向がみられるようになっているようです。そのため、糖度の高いぶどうをそのまま使えば、自動的に高いアルコール度数となるのを、少し抑えたいという思惑も働くのでしょう。

ワインのアルコール度数をめぐっては、様々な意見が交錯するようになっています。アルコール度数の調整に限らず、現在のワインの生産現場では、使うテクニックを多種に選択できる環境になっているということは指摘しておいてもよいと思います。

ちなみに日本では、非常に多くのワイナリーが、濃縮果汁を使って(つまり国外から濃縮果汁マストを輸入して)国内産ワインとして製造販売しています。

濃縮果汁の使用を認めるかどうかは、決め事の問題だと思いますがしかし、そもそもワインとはどういうものか、という根本の議論はされても良いのではないかと思います。

(伊藤嘉浩)



【関連ページ】

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