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ランソン、デゴルジュマン(disgorgement)の日付をラベルに記載へーその重要性 【フランス】 2010年3月28日


シャンパーニュのランソン社(Lanson)は、デゴルジュマン(disgorgement 英語ではディスゴージメント)を行った日付を裏ラベルに記載すると発表した。

当面この措置は、イギリスに出荷される同社のブラックラベル、ロゼ、アイヴォリーのNV(ノンヴィンテージ)に対して行われる。

なおシャンパーニュのデゴルジュマンの行われた時期の記載は、Bollinger、Charles Heidsieck, Jacquesson, Philipponnat, Jacques Selosse, Moutard, Bruno Paillardの一部あるいはすべてのワインに対してすでに行われている。



【コメント】

少し専門的な話になって恐縮です。disgorgementは、仏語ではデゴルジュマン、英語ではディスゴージメントと発音します。

デゴルジュマンとは、壜内2次発酵を行ったスパークリングワイン(従ってすべてのシャンパーニュ)で、最終製品としてコルクを打栓する前に、ワインボトル内で起こった2度目の発酵のときに壜内にたまった酵母などの貯留物を取り除き、補酒をする作業をいいます。

WORLD FINE WINESニュースレター 2007年11月号(脚注1)でも指摘しましたが、壜内2次発酵を行ったスパークリングワインでは、デゴルジュマンをいつ行ったかというのは、実は消費者にとって、現在のワインの状態を判断する上で重要な情報となります。

というのは、デゴルジュマンを行ってコルク栓をしてしまえば、後は基本的に普通の白ワインと同じ扱いをすることになるからです。

打栓して製品化されたスパークリングワインは、そのワインが持つ酒質によりますが、時間の経過とともに酒質がよくなるということは、あまり期待しないほうがよいというのが基本的なスタンスです。

ですから市場に流通しているスパークリングワインが、いつデゴルジュマンがされたのかを知ることで、そのワインが打栓されてからどれくらい経過しているのかを知ることができ、それによってそのワインの現在の状態を類推する情報が得られるということになるのです。

ブルゴーニュの高級白ワインなど一部の白ワインは例外としても、通常の白ワインでは、長く時間が経過すれば、ある時期からは酒質は徐々に落ちていきます。スパークリングワインであっても、基本的には同じことが当てはまります。

シャンパーニュはノンヴィンテージ(NV)が多いのですが、ノンヴィンテージであってもヴィンテージシャンパーニュであっても理屈は基本的に同じです。ヴィンテージシャンパーニュというのは、その年にとれたぶどうだけで造られたワインを言います。

たとえば1999年のヴィンテージシャンパーニュといっても、デゴルジュマンされたのは2005年なのかもしれませんし、2009年なのかもしれません。

同じ年の同一銘柄のヴィンテージシャンパンでも、中身が同じとは思えないという指摘はよくありますが、デゴルジュマンの時期が違えば、ワインの状態も変わるということはむしろ当然で、不思議なことではありません。

ノンヴィンテージの場合は、ぶどうの収穫年がいつなのか特定できませんから、そのワインの状態を判断する唯一の情報は、デゴルジュマンの時期にあると言えます。特に流通段階に長く在庫として滞留しているワインや、家庭内でいつ頃からあるのかわからないスパークリングワインは結構あるもので、これらのワインではデゴルジュマンの時期は特定できないため、中身の状態をテースティングして見極める必要がでてきます。

もしデゴルジュマンの時期がラベルに示されていれば、そのワインが打栓されてからどれくらい経過しているのかがわかるため、ワインの状態を推察することが出来るケースが多くなるでしょう。

現在デゴルジュマンの時期をラベルに明記している生産者はまだ数えるほどです。今後、壜内2次発酵のスパークリングワインに関しては、デゴルジュマンの時期が明記されることを望みます。

(伊藤嘉浩)



(脚注1)

WORLD FINE WINESでは、ニュースレターをお届けしています。デゴルジュマンについて触れました2007年11月号のバックナンバーもご希望によりお送りいたします。
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