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ぶどうの収穫―手摘みか機械収穫か ぶどうの栽培者とワイナリーにとって、ぶどうの収穫期はその1年のなんといっても最大のイベントです。それは単に収穫の喜びを得るということだけでなく、そのぶどうの出来不出来がその年のワインの質を決定するという意味で大きな意味をもつのです。特にニューワールドと呼ばれる生産地では、近年ぶどう園の規模の拡大に伴ってぶどう園の中の作業の機械化が進んでいます。 ぶどうの収穫に際しても、機械収穫を支持する人々と、従来どおりの手摘みによる収穫を支持する人々との間でよいワインを造る上での考え方に違いが出ています。今回はぶどうの収穫に焦点を当て、手摘みと機械収穫のそれぞれの功罪に触れてみたいと思います。 機械化の背景 ぶどう園の中では1年を通じていろいろなことが行われていますが、そのどれもが手間ひまがかかり非常に労働集約的です。特に近年新たに造られるぶどう園は規模が大きく、すべてを人手に頼っていてはコストがかかりすぎるという事情があります。また一方ではそうした労働力が集めづらくなっているという事情もあるようです。特に収穫期においては短期間に大量の人手が必要となるため、ぶどう園あるいはワイナリー側はコストと労働力確保の両方を見据える必要が出てきています。 機械収穫のメリット 機械収穫を支持する人と手摘みによるぶどうの収穫を支持する人の間の意見の違いには、大きく分けて二つの側面があります。ひとつは経済的な意味においての優劣、今ひとつはワインの品質に与える影響を考慮しての意見の相違です。経済的な意味においては、ぶどう園の規模が大きくなればなるほど機械収穫による経済的メリットは増加します。一方、たとえばぶどう園の面積が10haあるいはそれ以下の小規模なぶどう園では、逆に機械を買う費用をまかなえないことにもなります。 機械を導入する上でその経済的効果を考えることは非常に大切なことなのですが、ここでは機械収穫による経済的側面の話にはあまり踏み込まず、二つの収穫方法がワインの質にどう影響を与えるのかをそれぞれの収穫方法を概観しながらまとめてみたいと思います。 機械収穫を支持する人々が挙げるもっとも大きなメリットは、夜間に収穫できるという点です。これには機械を24時間有効に活用できるという意味も含まれますが、なんと言っても一番のポイントは気温の低い時間に収穫ができるという点です。気温の低いときに収穫するということは、収穫されたぶどうの温度が低いということを意味します。では収穫時のぶどうの温度が低いということがどういうメリットを持つのでしょう。
ワイナリーに収穫されたぶどうが運び込まれたときに、ワインメーカー(醸造家)が最も注意しなければならないことはそのぶどうの状態です。特に腐敗したぶどうが含まれている場合、それに伴うぶどう果汁の酸化はワインの質に直接影響します。りんごを二つに切ってしばらくすると、切り口の表面が茶色に変色していきます。いわゆる酸化ですが、これと同じことがぶどうにも起こるわけで、特にかびたぶどうでは急速に酸化が促進され、良質なワインを造るうえでは最大の障害です。 そこでワインメーカーはぶどうがそういう状態にならないように注意をはらうわけです。そのひとつの手立てはぶどうの温度を下げることです。酸化は温度が高い状態でより促進されるため、ぶどうの温度が低い状態のほうが酸化の促進が抑制されるというわけです。 ワインメーカー(醸造家)がワイナリーでのオペレーションで最も気を使うことのひとつは、ワインの酸化です。ひとたび酸化したワインはもとには戻りません。これは発酵前のぶどう果汁についても同じで、酸化したぶどう果汁から良質のワインが造られるという事はありません。したがってワインのもととなる原料ぶどうの質こそがそのワインの質を左右するわけです。その意味で、発酵前のぶどう果汁の処理はワイン醸造においてとても大切な位置を占めるのです。 とはいっても温度の低い状態でぶどうを収穫したとしても完全に酸化を抑えられるかと言うとそういうわけではありません。ここでは二酸化イオウを使って酸化を防止する手立てをとるのですが、酸化の可能性の少ないぶどうにはより少ない二酸化イオウの添加でよいのです。 さらに今ひとつ機械収穫のメリットを挙げれば、ぶどうの摘み忘れがないという点です。手摘みの場合にはぶどうの摘み忘れによる収穫ロスが5パーセント以上もあるといわれます。もしこの5パーセントのぶどうが健全でワインにするのに何の問題のないぶどうであれば、これはワイナリーにとって小さくない数字です。 機械収穫のデメリット 上述のように機械収穫には手摘みでは達成できないメリットがある反面、いくつかのマイナス面も指摘できます。その最大のポイントは、それぞれのぶどうの房、さらにはぶどうの実が収穫に適するかどうか選択できないということです。手摘みを支持する人たちの論拠はここにあります。 機械収穫ではすべてのぶどうを斟酌することなく収穫します。したがってボトリティスなどのカビが繁殖しているぶどうなども一緒に収穫してしまうことになります。さらにはぶどうの実や木にはカタツムリやかえるなどの小動物がくっついていることもよくあり、それらも一緒に収穫してしまう可能性もあります。また未熟果の選別もできません。 特に腐敗果が選別できないのは問題で、これを放置すればぶどう果汁の質が低下します。収穫したぶどうに傷みがある場合はやはり二酸化イオウで腐敗のそれ以上の蔓延の防止をするのですが、機械収穫の場合は収穫ぶどうに腐敗果が混じっていても収穫されてしまうので、手摘みを支持する人々はワインの品質にこだわるならぶどうは手で収穫すべきだと主張します。 理屈のうえではぶどうに腐敗などが起こらないようにぶどう園を管理すればいいということになりますが、これはなかなか簡単なことではありません。特にオーストラリアでは、収穫前の6週間は薬剤散布ができませんから、その間にぶどうに起こる病気などには防御する有効な手立てがありません。したがってワインにするには不適格なぶどうは、収穫時に選別する以外にないということになります。 手摘みのメリットとデメリット 手摘みのメリットとデメリットはまさに機械収穫のメリットとデメリットを裏返しにしたものです。手摘みの大きなデメリットは収穫にコストと時間がかかる点です。通常収穫は朝の5時、6時から始まりますが、それでもその日の収穫は昼過ぎまでかかります。ですから夜の空気の冷たいうちに収穫するというわけにはいかないのですが、その代わりワインに不適切なぶどうは選果できるという利点をもっています。 どちらの収穫方法を採用すべきか 収穫に機械が登場する前はすべてのぶどうは人の手で摘まれていました。しかし近年ではぶどうは機械でも収穫できるというオプションが与えられました。どちらの方法にも一長一短があります。どちらを選択するかはぶどうの状態、ワイナリーの考え方によりどちらにもなりうるでしょう。仮に、収穫時のぶどうの状態が完璧で、腐敗や病気もなく、小動物の付着もないと仮定すれば、おそらく機械収穫に軍配が上がるかもしれません。 しかしながら実際にはぶどうが完璧な状態で収穫を迎えられるということはそう簡単ではありません。その意味で収穫にいたるまでのぶどう園におけるさまざまなステージでのマネジメントは非常に重要になります。機械収穫を選択する際の前提条件として、ぶどう園でのシーズンを通してキャノピーマネジメントをはじめとする適切な施策がとられることが重要です。 よいワインはよいぶどうから。よいぶどうを手にいれるための努力を惜しまないワイナリーこそがよいワインにありつけるというわけです。 (伊藤嘉浩 写真共) 【関連ページ】 キャノピーマネジメント(Canopy Management)について このページのトップへ |
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